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穴掘り

女の子達がノノに加勢したのは、新顔の僕のフォローではなく黒騎士に近づく口実が欲しかったようで……。


黒騎士の周りには今、年若いハーレムが出来ている。


顔がいい男はいつの時代も男の敵だな、と。僕は思いながら。

小さなおててを動かして、砂をかき出すかき出すかき出す。


「どのくらい掘るの?」


僕の側ではノノと数人の年長者も協力してくれている。

僕等は教会の端の、床板が剥がれたその場所に、せっせ、せっせと穴を掘っていた。

スコップなんて便利な道具は二つしか無かったから、年長の男女二人はスコップで土をかき出し、他のメンバーは僕と一緒に木の棒で硬い地面をガツガツ削る。


「まだでしゅ」


一人で掘れば早い作業だけど、地道に子供達とわいわいやる作業も楽しくていい。

僕は地面に棒をぐさぐさ差して下地作りに勤しむ。


作業を勤しむ僕らの少し離れた場所では、多数の女の子に囲まれた黒騎士の姿もある。

囲まれたのは、ノノに絡んだ悪ガキトリオの脅しに僕が起用した後から。

黒騎士の周りに作られた年若いハーレムは、今まで黒騎士に話しかけたくも遠慮していたのか、怖がっていたのか、堰を切ったように群がる少女たちと数人の少年達。

少女たちは頬を染め、少年達も少女たちとは違う意味で嬉しそうに頬を染め。

黒騎士はぐるりと周辺を包囲され小年少女等にピッタリと周辺を固められている。


「黒髪が素敵です」

「私たち大きくなったらここ(廃教会)を出て行かなきゃいけないの。黒様はずっとこの街にいるの?」

「剣を使えるのか?かっこいいなぁ」

「長い手足が素敵です。黒様みたいな美男子みたことありません」

「私見晴らしのいい場所知ってるの!良かったら今度ご一緒しませんか?」

「お兄さんは貴族なの?」

「ノノの知り合い?私ノノを可愛がってるの」

「綺麗な黒髪素敵」

「黒様はロカに住んでるんじゃないんですか?」




きゃっきゃっと、イケメンを取り囲む少女たちと少年達。

羨ましくはない、です。

僕は興味無いです。


黒騎士の方は見ないでおこう。

僕は作業中。

集中しよう。


今は地面を刺すべし刺すべし刺すべし。


「ティーちゃんの棒凄く刺さるねぇ。

器用なのかね。私の棒全然刺さらないなぁ」


集中しすぎていた僕は、年長者の言葉で我にかえる。

集中していたみたいで、気づけば僕の棒だけぬかるみを裂くように深く深く刺さり。

んああああやりすぎてる……。


ぼくはテヘヘと無邪気に笑って急に力を弱めた。

あぁー柔らかいとこ終わっちゃったーここからは固いねぇって感じに。

今更だけども。





みんなでざくざく掘ったその場所から、うんしょうんしょと土を運び出し。

そして今度は踏み固める。

しっかりしっかり地を均し。


「もう落ち葉いれる?」


そう聞いてくれるノノに僕はふりふり頭をゆらして。


「さきにどだいがひちゅようでしゅ」先に土台が必要です


敷き詰めるのは柔らかく整形した蔓の束。

穴の底を覆うようにそれを敷き詰め。

上には落ち葉をふんわり載せた。


最後の仕上げは、僕おすすめの大きな大きな柔らか葉っぱを重ねがけで。と、いきたいけれど。

子供は寝相が悪いから、きっとずれてしまうだろう。

それなら、と。僕は考える。


年長者に「あまったぬのはありましゅか」と聞けば、すぐに誇りをかぶっていた大きな布を教えてもらえて。

これは使える!と。僕は内心でグッとガッツポーズを決めながら。


みんなで、使い捨ててあった大き目の麻布をうんしょうんしょと運び込み、落ち葉の敷き詰めた上にふんわりと乗せ。


うん。

完成。


わくわく、好奇心いっぱいな様子で、改良された落ち葉の敷布団に上がり込む子供達。


カサッカサと音をたてて。

彼等をのせるその場所は、決して上等な布団とはいかないけれど。


「すごーい!ティーちゃん頭がいいのね!」

「いつもよりふかふかになったよ!」


年長の女の子から褒められて、僕はフフッと嬉しくなる。

自分のことのように誇らしくしているノノもフフンと嬉しそう。


「本当!なんだかいつもよりふわふわするね」


寝転がったノノに見上げながら言われた僕も、落ち葉の敷布団にポスンと身体を預け。

うんうんいい感じにできてる!

最初より格段に柔らかくなった落ち葉の敷布団にほぅと一息ついた。



綿で出来たような柔らかさも暖かさもないごわごわした感触だけど。

最初の落ち葉を敷き詰めただけのものより格段にいい。


僕が懸念していた散らかりも片付いた……事はなく。少年にも、少女にもいるやんちゃ者達がジャンプし始めてしまったから。一瞬で麻布は沈み込み、落ち葉は舞い始めてしまった。

あーあ。

スンとした目で、ヤンチャ者たちから避難した僕は、少し離れた場所から成り行きを見守る。


彼らの所業が許せないノノ達が一生懸命しかりつけているけれど。

反省の姿勢を見せる者、開き直る者、逃げ出す者様々で秩序はない。

わーわーわちゃわちゃしながら元気な彼等を、スンとした顔ですっかり傍観者になって元気だなぁと見てしまう僕はなんだか自分が酷く老いた気分になる。


急に思い立って。

小さなおててを思わず持ち上げ、ぐーぱーぐーぱーして。

瑞々しく可愛い小さな自分の身体を確かめてして。

ううんと悩む。


そんな僕の姿は物珍しかったのか、年長の少女が僕に近づき、わしゃわしゃ頭をなげながら「大人しい子ね。変わってる子?」といいながら、落ち葉を取り囲んでもめている中にはいっていく。

彼女は先ほどまで僕等と一緒に作業をしていた子ではなかったから。


何処から来たのかと、視線を向ければ。黒騎士のところに集まっていた子の一人だったみたいで。

なんだなんだ。

面白そうな事やってるな、と。

子供達の好奇心がこちらに向かってきているのが見えた。


騒がしくて、元気にあふれた彼等の様子を、スンとした僕はその中に入り込めず脇の方で静観する。







わちゃわちゃしながら僕たちが落ち葉の敷布団を囲んでいた時、ウィガロが廃教会に戻ってきた。


彼はいつもの軽薄そうな様子だけど、何処か僕には彼がいつもより暗い雰囲気に見えた。

集まって騒いでいた子供達に緩く片手をあげた彼は、とぼとぼとジノとロッツォのいる奥の個室に向かっていく。

そして暫くこもった後、まだよたよたしているジノを連れ出し。


「すぐ戻る」

「ちょっとジノを借りてくぞー」


ヒョロリとした体格のジノを支えながら、連れ立って二人のろのろ廃教会をでていき。

そんな彼等の後姿を、個室の布から半分身体をだしたロッツォが見送っている。

寂しい彼等の後姿が、ウィガロが持ち込んだ情報が喜ばしいものではなかったのだと告げている気がして。

彼等の足取りは軽くない。

どこに行くのだろうと、僕は彼等の行く先が気になった。



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