拠点が公開されました
「わぁ素敵!!いいわこれならいいじゃない!」
穴の中で苦悩する僕の耳に、歓喜するノノの声が聞こえてくる。
何やら、黒騎士と二人でごそごそ入り口で動いているようで。
一体何をしているんだろう……と、僕はとても気になった。
「場所は、そうね。このへんがいいわ!」
何かを黒騎士に指示するノノ。
そして、ズン!!と穴の中まで伝わる地揺れの衝撃。
寝ていた同居犬もビクビクした。
僕は怖くなって、おそるおそる、のろのろ穴から顔をだし。
「出てきたわね!!さあ早く早く!!」
ノノに急かされ立たされた僕は。
「じゃじゃーん!!弟分になったティオに、ノノ姉から初めてのプレゼントよ!」
穴から出てきた僕を見ている満面の笑みを浮かべるノノと、能面のように無表情な黒騎士。
ひぃ。
逃げ腰になる僕だけど、ふと感じる違和感は、彼女たちの視線が僕よりもっと後ろを見ている。
僕は恐る恐る、彼女達の視線を追い拠点の穴の入り口を振り返り。
「う、うちょだじょ」う、嘘だろ
僕の拠点の穴の真上には、長方形の石で出来たプレートが埋め込まれていた。
【ティオ】と、不器用に掘られた文字は黒騎士が刻んだのだと文字の読み書きできないノノが喜んでいる。
でもこの配置は……。
綺麗な直角に割られた石のプレートは、何で加工したのか立派な表札で。
でもこの配置は……。
並々ならない熱意と愛着が感じられる力作だけれど、穴の真上に埋め込まれたその配置は、どう見ても僕が持つ【The犬小屋】のイメージそのもので……。
僕は膝からガクンと地面に崩れ落ちた。
「わふっ」
寝汚く、僕が起きてもまだまだ寝るつもりのようであったもふもふが、いつの間にか穴の外に出てきている。
そうだね、お前にはすごく似合ってるね。
これじゃあ僕の隠し拠点は、公開された犬小屋そのもの……。
あうあうあうあうあう頭を抱える僕の姿を、誤解しているのかノノは満足そうに見ているけれど。
僕が膝をついたのは感謝じゃないよ、悲しんでいるんだよ!
僕とノノから少しだけ離れた先には、「わふわふ」黒騎士にすりよるわんこの姿。
「昨夜は案内助かった」とか言われているわんこ。
黒騎士のお礼に、胸を張って「わふっ」じゃ、ありません。
お前かい!拠点ばらした犯人。
僕のロカでの濃い二日目は、長く、緻密に計算しながら計画してきた僕の理想と計画をまるっとひっくり返しながら。
思いもよらない形でスタートした。
人生は何が起こる変わらない。
だけど、それが人生だから。
僕は一人、渋い顔で。幼児なお顔をくしゃくしゃに老け込ませた。
「ついてきて!ティオに合わせたい人がいるの!」
ノノは相変わらず強引で、改造された拠点の入り口に嘆く僕の腕を容赦なく引っ張り連れ出そうとする。
脱力した僕は、もうなされるがまま。
ノノの向かう先にはロッツォがいるのか、ジノが居るのか。あるいは二人が揃っているのか。
木の実はもう残っていなかったから、ロッツォの怪我の経過はどうだろうか。
ジノの容態はどうなっただろうか。
僕はいつものように考えを巡らせながらノノの後を手を引かれるままついて歩いた。