依頼を受けよう
パタパタカウンターの下でアピールする子供に、優しい職員さんが直ぐに出てきてくれる。
……なんて事は無かった。
世の中ってのは、いつの世でも厳しいものなんだから。
隙間から少しだけ見える受付のお姉さんの目はすごく冷めていて、気だるげに僕の行動を流し見ている。
片手間にミディアムの毛を指輪先でくるくるしながら。
僕と目があっても、彼女にとって僕が空や木なんかの風景みたいに反応がない。
何もアクションを起こしてくれないのは、彼女にとって僕は受付作業をする相手ではないと思われているからなんだろう。
感じ悪いなぁ。
そう思いながら。
でも、達成率が順調ではない様子の孤児宛の依頼は慈善事業な面が強と思う。
ギルドにとって通例になっていても。
歓迎されている訳ではないみたいで。積極的に与えて貰える仕事ではいのかな。
僕は鳥の目をかりて依頼報告に来た子が無報酬で返されていた姿もみている。
依頼物の扱いが雑であったし、そもそも依頼物ではないものを持ち込んでいた。
当然、受理はされず。報酬もなし。
そんな空振りがあると仲介側からすれば採算悪そうだし、経験のなさから出るトラブルもちょくちょく見て。
それにいくらか仲介側のギルドが間に入る事もあった。
要はこの仕事、ギルド側にとって不良債権的な立ち居ちなのかもしれない。
やる気のなさそうな職員のモチベも分かる。
割をくっちゃった僕的には困るけども。
とにかく、日によって担当者が代わる受付で、受理のやり方は担当者次第。
今回の僕がハズレ相手にあたってしまった事は間違いない。
うん、困る。
だって一文無しなんだから。死活問題。
引くに引けないんだから。
「ちぇんじー!」
突然の大声をあげた僕。
お姉さんは僕の言葉にびっくりして目をパチパチ瞬いた。
「はぁ?」
訳がわからない様子で困惑気味に僕を見返す。
やっとまともに視線があった気がする。
でももういいや。チェンジ!
「もっちょよいこにかわってくだしゃい。こうちゃい!おねぇしゃんちぇんじ!」
もっと良い子に代わって下さい。交代!お姉さんチェンジ!
常識ある大人な僕は今じゃ小さい子供の姿。
僕は僕の見た目を最大限に活用して、遠慮と配慮を置き去りにした要求だけを度直球に突きつけてみた。
お小遣い稼ぎにきた街デビューの初日に、手ぶらで帰りたくない。
口に出す言葉は全部噛んじゃう僕なので。
言葉はそのまま短くストレート!
「ギャハハハハギルドでチェンジ初めて聞いたわ」
「言うねぇ坊主。もっと好い子にチェンジ。ハハハハハ100年早ぇ」
「リンダの塩対応は坊主にだけじゃねぇから許してやってくれ」
周りで僕の声を聞いていた野次馬がドハハッと盛り上がった。
活気はもりもり。朝から元気な探索者達だ。
リンダというらしい受付のお姉さんはイライラしながら奥にひっこんでしまった。
直ぐに代わりの担当が受付にたつ様子は、全然ない。え?
「あーあ、怒らしちまったな。今日はしめぇだ」
「受付しまっちまったな。まぁ俺のパーティーは今日はでねぇからいいんだけどな」
僕を責める言葉を吐き出した大男は、無人の受けにたいした関心は無いようで手元の酒樽を傾けた。
まじか。
クレーマーやっちまった。すいません!!