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石橋は叩いて渡りたい

僕に注がれる視線はずいぶん少なくなった。

きっと。僕への視線がルールを知らない初めて見た子供から、ルールを知っている初めて見た子供の認識に変わったから。


小さな違いだけど、その違いがここでは大きな意味を持つ。



僕は周りの荒くれたちをゆるりと見ながら小さな足を元気に動かしとてとてゆっくり歩く。


歩きながら僕が見ているのは、入念に備えてきた僕が自衛する為の防衛策。

シンプルに誰がどちらの人間なのかを探っている。


僕が見ているのは僕を見ているか、見ていないか。見ていないなら大丈夫。

見ているなら、視線に悪意があるかないか。


ギルドのルールを知り、緑の依頼書を手にとった子供な僕は、彼らの中では孤児の枠に入っている、筈。

この街は活気あって、マデラン親子のように優しい人間も住むけれど、人が集まる場所には良い面と悪い面が必ずある。

良くも悪くも、一番影響されやすいのが一人で生きていけない幼い子供達。


頼るべき保護者に頼れない子供達の救済の一つがこの場所になっているようで。

生きていくための稼ぎの手段がギルドにある緑の依頼書で小銭を稼ぐ事。

苦労や危険に飛び込まなくても生きていける子は知らされていないけど、保護者が居ない孤児になってしまった子供達だけのネットワークで共有される暗黙の手段なんだろうなと。


それを知った僕は考えた。

小さな僕が、荒くれ者が集う不似合いなギルドに居る事に野次が出る事は、よそ者を追い出したい彼らからの洗礼で、僕は不安に思わなくても大丈夫。

でも、ルールを知って緑の依頼書を手にした僕に向けられる悪意は。


きっと、僕に危害を加えるつもりがある相手からのメッセージだと考えている。


嫌な大人の姿も鳥の視界から見ちゃったから。

良い人ばかりの優しい世の中は理想は難易度高めな感じです。




ニヤニヤ僕を見ている男の中で1番目立つのは、一際凶悪で悪人面な巨漢の大男バルク。

黄色く染まってしまってる大きな歯や、傷だらけの肌がいっそう恐怖感を増してくるけど、彼は外見の印象より子供に優しい不器用な人。

自分の顔が怖いの自覚してるっぽいから近付かず、遠くから見守ってるつもりなんだろうけど……ここを利用してる子達からは1番避けられてるのを見たなぁ。


とにかく、彼は大丈夫。


それよりも厄介な人が、面白くなさそうに。つまんなさそうにしながらも、僕から視線は外さずジロジロ見てくる中年の男。

街に溶け込めそうな外見のあいつは、何度か子供が手にした報酬を人気のない場所までつけて行って横取りしようとしていた嫌な奴。

毎回鳥の糞落としたり、枝落としたり、鳥の視界を借りていた僕も色々してきたけど、懲りないし手慣れた感じだった。

被害にあってる子がどのくらいいるんだろう。

僕にも目をつけたな……。


依頼中の怪我や他の街への移動なんかで、入れ替わりが激しいギルドは僕が見た事のない人間も複数人。


僕に興味を向けている人を探りながら、無垢で無邪気な外見の頼りない小さな僕は、誰にも見られない頭の中では用心深く考え巡らせながら。

とてとててちてち歩いて依頼カウンターまでやってきた。


入念な下調べになった鳥の目からの観察で、僕は街の中で暮らす一歩を確実に歩んできている。

無鉄砲なことをして火傷なんてしたくない。

石橋は叩いて渡りたいタイプだから、入念に情報集めて、計画的に、慎重に。


抜かりない動きで幼い身体で不自由していない僕を自画自賛しかけた時。


そびえ立つカウンターに作られたテーブル板が僕の計画を狂わせた。

カウンターの足よりテーブル板が出っ張っていて小さな僕は丸ごと死角にジャストフィット。


んああああああああ屈辱的低身長!憎きたてなが族!巨人の住処めえ。

僕の身長はここを利用する子供たちより想定外に低身長だったっぽい。


「うけちゅけおねがいしましゅ」


小さなおててを伸ばして緑の依頼書をひらひらひら。

職員さん、カウンターから見えます?

小さい子が巨人族に白旗振ってます。緑の依頼書白旗がわりに。

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