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幼児の学び

次の日、すっかりと元気になっていた僕は、もう一度肩にふれてみた。


あったかい。


おそるおそる木を下へ下へと降りていくと、そこは熊の姿もなく、安堵の息を吐き出した。

あぁよかった、熊はいない。


僕は考える。


昨夜熊に襲われたときは身体がひどく重かったのは熱のせいなのか。

肩の痣の位置にふれても暖かさが感じられなかったことも気にかかる。

うんうん悩んで知恵熱を出して熊に襲われかけた僕は、考えるよりまずは動いてみようと思った。


「ばぁああ」


かざした小さな両方のおてては、僕が声に出した通りの「バーナー」的な火をふいている。

昨夜のマッチの火なんかじゃなく。勢いのあるバーナー火力。


ううん。

不調を起こす熱はこわいなぁ。


病み上がりの僕は深く考えることを辞めて、小川まで下って歩く。


ぐんぐん下って、小さな水場についた僕は、冷たい水に小さな足を二本つけてホゥと一息ついた。


きもちぃー。


ふーっと力をぬいて、楽にして、森に身を預ける様に力を抜いた僕は目を閉じる。

鳥の目を借りるために集中してるわけじゃない。

脱力して、蕩けそうな、ふんわりな気持ちで。


「ふーっ……(ベロンチョ!)んええ!?」


ベロっと頬を思いっきりなめられて、僕はびっくりして飛び起きた。


僕が驚いて起き上がると恐怖に怯えた一匹の狐がものすごい速さで森の奥へと走り抜けた。


は?動物?


熊以外の動物が初めて僕のところに自分から寄ってきた事に、僕はびっくりして何度も何度も目をこする。

そして、またお目目をぱちくり。

うーん。


僕はじんわり暖かい肩に触れた後、さっきの僕の行動を思い出しながら、その通りに身体の力を無にしていき、脱力、脱力、脱力。

そうすると。


ピイ!

小川で脱力した僕の小さな頭にかわいい小鳥がとまっていた。

僕は小さなおててで小さな肩にふれ、そこからじんわりのあったかさがなくなっていることを確認。



当たりだ。

動物は僕に近づきたがってる?のに、僕からはいつも強者感がでているぽい。

身体の力を抜いて自然に溶け込むようにスーッと存在を薄くすると強者感はなくなり。

何もしてない僕は、狼の形の痣もあったかくて、謎に醸し出してる強者感。

うーん。


僕は、僕の頭でゆっくり寛いでから飛び立っていく小鳥に、久しぶりに鳥の視力を共有させてみようと思った。


場所は森の中。

街中でやるわけではない僕の実験に怖い黒いのに見つかる恐怖も不安も少ない。






鳥をいれかえ、いれかえ、鳥の視界を楽しんだ僕は気づく。

鍵は動物が逃げちゃう、僕の強者的な感覚!

鳥の視界で見てる僕にも、それちょびっと出ちゃってた。

だから、あの時あの黒い男は小鳥の僕を捕まえて話しかけたんだ、と。




悩みが晴れてスッキリした僕は大の字で小川の隣に寝っ転がった。


「ふぃー」


強者的な感じだすのもなんとなくわかってきたし、それが周りに与える空気感もなんとなく分かってきた。

僕は弱くて賢く強い。

そして、カギになるのは肩の狼。


うーん。

僕は今日はマデラン親子を見に行こう!と決めた。

今の僕に黒い男を怖がる気持ちはほとんどなくなってきていた。







その後いつものようにマデラン親子を観察しはじめた僕は、知ってしまう。

小鳥の僕にパン屑投げてくれていたのも僕が隠せてなかった存在感があったからなんだ、と。

気づいた僕はもう一つ気づいてしまう。

謎の小鳥が出す謎の存在感に気にせずパン屑をまく親子は、思い返せば街であの二人だけだった。


もしかして、マゼランとその母はかなり鈍いか肝の据わった人たちなんじゃないかな、なんて。

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