File3 命をかける
「もう雨も止んだみたいだし、ちょっと外の様子を見てこようかな。一緒に来る?」
「こんな時間なのに?寝ないの?」
「え、あーそっか。生活リズムが違うのは当たり前か」
ぼくがそういうとケイハンは、にこっと笑ってみせた。
「良いよ行く。私は別に寝なくても平気だし。とは言っても、三日に一回は少し仮眠が欲しいけど」
「え!そんなに寝なくても平気なの?」
発掘された昔の記録によれば地球人も、三日以上平気で起きていられた人も居たそうだけど、現代においてそれはほとんどありえない。現代の地球人は過去と比べてより脳を使うようになっていて、とても睡眠がないと耐えられないのだ。
ケイハンはきょとんとしてうなずいた。
「うん。そっかぁ、これも違いかぁ……ふーん、やっぱり面白いね。違う環境で進化してきた生物同士を比べると」
「そうだね。それじゃあ今日は、ちゃんとした拠点を建てられそうなところを探そう」
この星は火山岩によって陸地が構成されているらしい。シェルターから少し歩いた所に池と川、そして火山だったであろう黒い山が見えた。さっきの雨で採取した雨水は一応飲めるらしいが、その頻度が分からない以上水源の発見は嬉しかった。すぐ近くに火山がなければここに拠点を建てても悪くなかったかもしれない。
そこから火山に背を向けて進んでいくと、美しい緑の森が見えた。その木々は主に二種類に分かれていて、幹まで緑の木と、オレンジ色の幹の木だ。遠くからだとよく分からなかったけど、どうやら数多くの生物が集まっていて、立派な生態系もできあがっているようだった。木々が生えているということは、この辺りでは栽培が可能だろう。もちろん土地に合わないかもしれないから、また調査する必要がある。
その後も調査を続けた結果、この星の日照時間が非常に長いことと、様々な環境が局地的に生成されていることが分かった。これだけ歩き回って調査をして、ようやく日が暮れてきたんだ。この辺りのほとんどの土地は岩とそれに付いた小さな赤い植物だけ。それらが夕日に照らされている光景は、とても綺麗だった。
一つ、シェルターから遠く離れたところの海の先に、何かが広がっているのか気になったけど、今日のところは引き上げることにした。
ぼくたちはまだ夕焼けの光が空に残っている間にシェルターに戻ってきた。
「ふぅー、結構歩いたわねー」
「うん、疲れた……拠点に良さそうなところ、どこかあった?」
ぼくがそう尋ねるとケイハンは少し視線をずらした。
「うーん……いろいろなところを見てまわっけど、やっぱり最高ってところはなさそうね」
今日ぼくたちは、太陽が昇っていた方向に進み、夕日に向かって帰って行った。明日はその逆をして、拠点に良さそうな場所を探そうと思う。
一度宇宙船に戻って取ってきた布団にくるまった。ケイハンは、立って寝るから良いと言った。ぼくはそれを尊重することにして、彼女に背を向けると窓の外を見た。
そうしてゆっくりと日が沈んでいくのを眺めていると、いつの間にか眠ってしまっていた。
「……バカだね」
「うーん、あれ?いつの間に寝てたんだ……」
「おはよう、よく寝てたね」
窓の外はまだ暗かった。さっきよりも冷え込んでいる。今、すごく布団から出たくない。
「ビーシュ、あなたの星の一日ってどれくらいの時間なの?」
「地球の自転は60カゥだよ」
ぼくが布団にくるまりながらそう言うと、ケイハンは頭に右手の指を一本当てて言った。
「この星はだいたい120カゥみたい。一日に地球の、ちょうど二倍の時間がかかっているということ。提案なんだけど、この星は昼の日と夜の日が交互に来る星だと考えない?」
「いいけど、ケイハンはそれでいいの?」
ケイハンはこくんとうなずいた。
「そっか。分かった。それじゃあそれでいこう。そういえばお腹すいてきたな……いつまでもクリームに頼っていられないし、そろそろ動物も捕まえたいな」
そう言った直後だった。
「なに!?」
一瞬、シェルターが大きく揺れたんだ。
「地震かな、いやまさか噴火!?」
「待っててビーシュ、少し見てくるから」
ケイハンが扉に向かって進んでいく。その姿に恐れや迷いはなかった。
「気をつけて」
もう一度シェルターが揺れた。今思い出したけど、ケイハンのシェルターを破壊したやつがこの星にいるんだ。まったく安心できる状態ではなかったんだ。
すっ……っと扉が現れる。ケイハンがそれを開けて外を覗こうとした時、夜の闇の中になにかの影が見えたような気がした。サッと動いたそれには、緑の光がキラッとしながらついていた気がする。
「待って!」
間に合わない。ケイハンの片足は既に外に出ている。もしぼくが見たものが本当にいるのなら、打つ手はない。世界がスローモーションになるって、こういう感じなんだ。ケイハンが体勢を変えようとしているのがわかった。でも同時に、ぼくが見たものが実際にいることもわかってしまった。明らかに、ケイハンに飛びつこうとしているなにかがいる。緑の光……ギョロっとした大きな目玉はしっかりとケイハンを捉えていた。
スローモーションが解除された。
シッ!ドゴッ!ブシュァッ!!
この三つの音がほぼ同時に聞こえた。
「?」
真っ赤になったケイハンは、いつもと変わらない様子でぼくを見て突っ立っていた。つづく。
こんにちは!はとです!
マジでやっちまった(現実と作内両方)
次話ちょっと私が好きな雰囲気にしてみようかな。ムズいかな。どうなるかはお楽しみに〜
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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それではまた!( *¯ ꒳¯*)ノばいばーい♪