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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
43章 クロスステッチの魔女と村巡り

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第970話 クロスステッチの魔女、二つ目の村を出る

 私が村を出る時は、いろんな人たちがお別れを言いにきてくれた。一晩だけの客として、うまく振る舞えたとわかって嬉しくなる。


「魔女さま、気をつけてなぁ」


「探してる場所が、見つかるといいね」


「また来てね!」


 口々にそう言われるのへ手を振って、私は箒に跨がって地面を蹴る。魔力を通して浮き上がらせると、村人からどよめきの声が上がった。ちょっといい気分のまま、私は上へ、上へと浮いていく。しばらく浮いて、他の人から見えなくなったろうあたりで、次の目的地のために《探し》の魔法を使った。


「別に、地上で見られてもよかったでしょうに」


「……迷子になりますって喧伝してるみたいで、なんだか恥ずかしくて……」


「わからないと思うよお?」


 ルイスとアワユキにはこう言われたけれど、この点は個人的なものだ。うん、仕方ない。次の村は三つあるエルキリアのどれかだと思うのだけれど、と思いながら刺繍に魔力を通すと、ふわりと鳥の形に広がった。山を越えるから、遠くなるらしい。飛んでいるならきっと大丈夫だ、と思いながら、私は一度空模様を見回した。

 確かに、少し雨の匂いがする。足の速い夏雲だから、雨宿りができる場所を考えながら飛んでいくことにしよう。


「……雨に足を止められても、すぐに秋になるわけでなし。多分、大丈夫よね」


「あんまりやりすぎないように、気をつけた方がよろしいですかと」


「キーラさまがのんびりしすぎて後悔する前に、一応、お口を挟ませてもらいますね」


 キャロルとラトウィッジにもそんなことを言われながら、私は箒を進ませた。とりあえず雨に降られるまでは、行けるところまで行こうと決めている。


「マスター、後ろ、雨雲来てますよ」


「すごく真っ黒いやつ!」


「あらやだ、濡れる前に降りなきゃ。ありがとうね二人とも」


 昼前に出て、そろそろ少し食べようかという頃合いになって、黒雲が本格的に近づいてきた。私は適当な大きな木の下に入り、《雨除け》の魔法を私がいる辺りにだけかける。


「あの感じだと、雷も降ってきそうね」


「えー」


「今日は完全に足止めですかね?」


「速く流れるやつは早いんだけど……風の向きが悪いわ。進む方に流れて行っちゃうから、雲に抜かしてもらわないと」


 軽く風を読んでみると、どうにも運が悪かった。雲に私たちを追い抜いてもらうか、雨を絞り切ってもらう必要がある。なので今日はダメかも、と開き直って、魔法で火を起こし始めた。


「ルイス、お茶を淹れて」


「かしこまりました、マスター」


 お茶を飲んでゆっくりするくらい、バチは当たらないだろう。

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