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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
43章 クロスステッチの魔女と村巡り

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第957話 クロスステッチの魔女、狩人の物語の違いを比べる

 ジョーが語る狩人ヨルカの物語は、私に聞き覚えと新鮮味の両方を与えるものだった。知っているはずなのだけれど、多分、細部が違うのだろう。


「それで、ヨルカと村の人達はどうなったんですか? 獲物が獲れないなら、畑をするとか?」


「この辺りで、村の口全部養えるような畑は作れねぇ。まず、地面がない。ヨルカんとこも、そうだったと言われている」


 うまくやれば山の斜面に畑を作ることはできるけれど、そもそも北の山は、土が豊かではなかった。農家でなくてもわかる。場所があったとしても、山が穀倉地帯になることはできない。山の恵みを貰い受ける形は、避けられない場所だ。

 そんなところで、雛や仔鹿まで狩り尽くせばどうなるか。その教訓として伝えられるのが、『狩人ヨルカ』の物語だった。


「雛がないから、村の近くの森で育つ鳥がいねぇ。仔鹿がないから、森で育つ鹿がいねぇ。他の獲物だってそうだが……他所から流れてきたはぐれだけでは、番えねぇから増えない。

 村は段々、食うものを自分達で獲れなくなった。その分を補おうとして木の実や球根を掘り尽くしたら、今度は木々の実りまで減っていった」


「悪循環ですね……」


「そして、ヨルカは飢えた村の人達のために、今まで手を出さなかった主を殺した。主はでかい猪だったから、その肉で村を養おうとしたんだ」


「今まで沢山倒してたなら、そのお肉は残ってなかったのー?」


 アワユキの言葉に、ジョーは首を横に振る。ちなみに私が知っているヨルカの話だと、主は大きなフクロウだった。猪の方が、村全部を養えそうだ。


「保存食とかにはしていたが、それ以上に人が増えたとか、売っちまったって聞いている」


 この物語は、ちゃんと食糧を貯めておかないことも戒めているのだ。だから、村は飢えた。


「ふうん。主って、殺しちゃったら大変そうだねー?」


「ああ、事実、大変なことになった。主は死に際、山に祈った。この不埒な狩人と、罰当たりな村を養う肉にはなりたくない、と願った。そして、願いは聞き届けられた。

 ヨルカが獲物を担いで帰ると、村の中には誰もいねぇ。ヨルカの家族も友人もいなくて、鳥だの鹿だの……ヨルカの仕留めてきたのによく似た、鳥と獣たちが沢山いた。村人の数だけいた」


「変えられてしまったのかしら」


 キャロルの言葉に、ジョーが頷いた。


「ヨルカは村人を探し回り、見つからねぇから、一回しまうために、仕留めた主の毛皮とかを持った。すると皮はヨルカに貼り付き、形を変えさせ、ヨルカ自身が次の主にされたって話だぁ」


 そして、この世のどこかにはヨルカが主となり、村人たちが鳥や獣として穴を埋めさせられている山がある。そう、ジョーは話を締め括った。

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