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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
39章 クロスステッチの魔女と《ドール》失踪事件

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第898話 クロスステッチの魔女、お茶会に招かれる

 誤解が解けたら、とりあえず、気は楽になった。泥棒については、あれだけデカデカと似顔絵を貼り出したのだ。すぐに捕まるだろうし、そうすれば何一つ心置きなく、私はのんびりと過ごすことができるだろう。それはそれとして――


「貴女、よかったらこれから私たちのお茶会に来ない?」


「えっ」


「顔はよく見るけど、貴女のこと、そういえばよく知らないもの」


 私からは正直、まったく知らない人なのだけれど。向こうには何度か見かけられていたらしい。知り合いを増やすと決めたばかりなので、私はそのお茶会に飛び込みで参加することにした。


「私はリボン刺繍のニ等級魔女アルミラの弟子、クロスステッチの三等級魔女のキーラといいます。よろしくお願いします」


「ええ、よろしく。私は毛糸編みの二等級魔女ヘレナの弟子、レース編みの二等級魔女マリヤ」


「あたしはじゅうたん織りの二等級魔女アメリアの弟子、タペストリー織りの二等級魔女ガヘリア」


 私は丸いテーブルを囲んでいた、お二人のお茶会に混ぜてもらうこととなった。どこからともなく増えた椅子に、遠慮なく座る。

 マリヤ様はふわふわと柔らかい茶髪に、色の明るい黄緑色の丸い瞳をしていた。色合いの違う何色もの白とレースとフリルを多く使った服に、肩を少し見せる形。もっとも、その上からレースを編んだストールを羽織っているから、はしたなくは見えないのが彼女の技のようだった。

 ガヘリア様は、まっすぐで色の濃い赤毛に、金色の猫に似た形の瞳と、この辺りでは珍しく少し色の濃い肌。黒いドレスは、一部がじゅうたん織りを使って模様を作り出しているのがわかった。レースを編んだらしい長手袋も、いいなあと思う。とても細かくて、良い仕事だった。


「あなた、まだ《肉あり》だと思っていたけれど……それは、あってる?」


「はい、まだ《肉あり》です。なのでまあ、期限の細かい依頼でも気にしないでできるといいますか」


「あたしはもうダメ、細かすぎて無理!」


 ガヘリア様は両手をあげてそう声を上げ、マリヤ様に「はしたなくてよ」と言われていた。


「お二人は長年のお友達、のように見えますが」


「四等級試験の同期です」


「あなたにはなくて?」


「あー……連絡先の交換に、あまりならなくて」


 緊張しすぎていたのもあるし、お師匠様には「まあそれ自体は珍しい話でもないね」と言われた。後から交流を持った相手にどうにも見覚えがあり、聞いてみたら魔女試験の同期だった、ということもあるらしい。

 


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