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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
38章 クロスステッチの魔女と服の仕立て

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第874話 クロスステッチの魔女、完成品を見せに行く

「これで……最後」


 パチン、と結んだ糸を切る。すべての縫うべき部分を縫い終えた服を、私はくるりと裏表をひっくり返してみた。軽く引っ張ってみても、当然、取れるようなことはない。全体を撫でても、まち針が残っていたりはしない。数も数えた、問題なし。針はすべて、然るべきところに入っている。


「かんせーい! なんだかんだ言ってやればできるのね、私!」


 普段の自分では絶対に作らないような、派手な服。自分で服を仕立てるのだって、随分と久しぶりだった。魔法の道具が代わってくれるわけでなし、長いものを延々と縫っていると、いつもなら飽きてくるのだ。今回はうまく行ったし、一度できたら、次も頑張れるかもしれない……なんて、単純に考えてしまうけれど。


「おめでとうございます、マスター!」


「着てみてー! 見せてー!」


 はしゃぐルイス達に応えるために、私はすぐに着替えてみせた。新しい服を着た自分の姿を、衣裳箪笥の全身鏡で映してみる。あんまりしない服装で不思議な気分だけれど、悪いものではなかった。これを少しの遠出で着ていくのは勿体無いけれど、いい外出着になったと思う。雪糸が万が一にも溶けてしまわないよう、これからもっと暑くなったら、魔法で保存しておくべきだろう。


「ねえ、似合う?」


「すごく!」


「アルミラ様にお見せにいきましょうよ」


「きっと喜ばれるのでは?」


 確かに、出来上がったら見せに行くつもりではいた。木の窓を開くと、夕方に差し掛かる頃合い――それでもお師匠様の元には、日が暮れる前には着くだろう。

 水晶を取り出して、お師匠様の方に向けて波を飛ばした。すぐに、向こうが取った気配がある。


「お師匠様、私です。キーラです。新しい服が完成したので、見せに行っていいですか?」


『前に作らせたら飽きただのなんだのと言ってたあんたが、珍しいね。今は客もいないし、せっかくだから見せてもらおうじゃないか』


「ありがとうございます!」


 すぐに家を出ることにした。せっかくなので上等な靴を履いて、新しい服が箒と擦れてしまわないように――特に裾のフリルは他の糸より少し脆いから――気をつけて箒に跨がる。もちろん、みんなも乗ってきた。地面を蹴って浮き上がり、枝にぶつからないよう注意深く、ゆっくりと上へ上がる。それから、木々より高いところまで上がって、慎重に飛んだ。せっかく新しい服で初めて外出して、服を早速ダメになんてしたくない、というのは当然のことだろう。

 目的地にはすぐについて、私は今度も慎重に箒を下ろした。

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