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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
6章 クロスステッチの魔女の冬ごもり

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第80話 クロスステッチの魔女、冬ごもりの支度をする

 ルイスに新しい靴を贈って、無事に履いてもらえて。それを喜んでゆっくり、とはいかない状況になっていた。別に特別なことではない、冬支度が必要な頃合いになったのだ。パンと砂糖菓子なら魔法で出せるものの、ソーセージやハムは貯め込んでおかないといけないし、雪かきの用意もいる。人間だった頃より厳重な冬備えは必要ないはずだけれど、一人で過ごす冬は初めてだった。ルイスがいてくれて、本当によかったかもしれない。


「マスター、冬になったらマスター達も家に籠るんですか?」


「うん。空の上の方って、すごく寒いのよね。いくら防寒魔法があるにしても、特別な用件がなければ出かけないかな……」


 持ちやすい重さに調節した斧で薪を割りながら、私はルイスにそう話していた。魔法の刺繍に炎を出すとか熱を保つものはあるけれど、ここは森の側なのだ。日当たりを遮る木を数本、木こりの真似をして伐採していたものを薪にしていた。暖炉で火が揺らめく様も、私は美しいと思っている。人間ほど沢山用意する必要はないけれど、少し貯めていた。


「僕にも何か、手伝えることはありますか?」


「あ、じゃあ……森で、枝を拾ってきてくれる? 乾いてる奴、火を焚くのに用意しておきたいから。持てる大きさのでいいからね、細くても小さくても役には立つから」


「わかりました」


 そう言って向かおうとするルイスの袋に砂糖菓子を足してやりながら、私は「あまり遠くに行かないでね。見える範囲にいてよ」と声をかけた。頷いたルイスを見送りながら、もうちょっと薪を割っておこうと斧を振るう。ルイスの木剣に施していた《重量調整》を工夫して、私が持ち上げやすいように斧を軽くしていた。その分威力は減るから、楔を入れたりして補っている。


「魔法って、やっぱり便利よねー……昔なら多分、もっと前々から準備していただろうし」


 薪を割った後は、ルイスが沐浴をするための薬草を摘んでおく。お師匠様に教えてもらったレシピに従い、摘めるうちに摘んでおいて《保存》の魔法の布にくるんでおくことにした。何種類かの薬草は乾燥させると効果が変わると言っていたことを思い出して、念入りに確認した《保存》の魔法で包んだ。それから魔力のあるいくつかの石も拾っておいて、これもしまっておく。ついでに食べられるベリー類も拾っておいた。


「ルイス、そろそろ強い風が吹いて来たわ。日も傾いてきたし、家に戻りましょう」


「あ、マスター見てください! いっぱい拾えました!」


 少し離れたところで枝を拾っていたルイスに呼びかけると、彼は思っていたより沢山の枝を拾って私にニコニコと笑って戻ってきてくれた。


「冬はずっと一緒に居られるなら、僕、ちょっと楽しみかもしれないです」


 と笑う私の《ドール》は、やっぱりかわいかった。

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