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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
34章 クロスステッチの魔女はお上りさん

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第798話 クロスステッチの魔女、お買い物する

 私が借りた皮縫い針は、魔都で店を構えている魔女が作った物だと説明を受けた。特に厚手の革となると、本来であれば菱目打ちで先に穴を開けておかなくてはいけない。針の細さと鋭さでは、厚い革には勝てないからだ。皮縫い針もすべての革に勝てるわけではなく、兎くらいの薄手の革にしか、普通の針のようには縫えない。


「これは金物細工の魔女が渾身の工夫と魔法を込めた、厚い革でも菱目打ちのいらない針です。何か作って、試してみてください」


 そう言われたので、私も、せっかくだから何か革で作ろうかと思った。普段は菱目打ちで先に穴を開けないといけないのが面倒なのもあって、あまり革で細工することはしてないのだけれど。


「そういえば随分と前に、ルイスには魔兎の毛皮で靴を作ってあげたわね。他のみんなにもやってあげることにして……まずはそこからね。毛皮を見に行かないと」


 近くの山まで行くのも、戻ってくるのも難しい話ではない。とはいえ、山に魔兎がいるかも、それが好みの色の毛皮をしているかも運次第なのだ。それだったら、もう毛皮を売っている店に行く方が早いだろう。

 というわけで、毛皮を売っている店までぶらぶらと歩いて行った。貸し道具屋の魔女に道を聞いても良かったけれど、せっかくなので、他の店も見ながら。中には木の上や、他の店の上に扉を構えた、完全に魔女だけを対象とした店もある。箒がなければ、店の扉を叩くことはできない。簡単で単純で、だからこそ効果は抜群だ。何せこの街は魔女の街だから、それで商売も成り立っている。

 私が見つけた毛皮の店は、屋根の上に石鹸の匂いがする店を置いていた。軒先からは様々な色に染められた革が並び、看板も革製で店の名前が刻印されている。中に入ると、むわっと独特の匂いがした。革の匂いだ。匂いだけなら猟師小屋に似ているけれど、血の匂いはしない。


「いらっしゃいませ、どんなものをお探しで?」


「素敵な皮縫い針を借りたから、何か作りたくなっちゃって。目的はないけど、せっかくだから色々見てみます」


 私の言葉に、素敵な革製の三角帽子をした魔女は微笑んだ。それから、店の中をうろうろと歩き回り、他の魔女がそうするように、毛皮や革に触れたりする。ついでに羊皮紙も少し扱っているようで、私がよく使う切れ端のまとめ売りもされていた。とりあえず、ひとつ手に取る。


「みんなにね、何か革で作ってあげようと思って。うーん、何がいいか考えながら買わないと……」


 なんてことを呟きながら、とりあえず革を触るだけでも楽しかった。

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