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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
34章 クロスステッチの魔女はお上りさん

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第797話 クロスステッチの魔女、貸し道具屋に入る

 魔都での日々は、穏やかで刺激と意欲に満ちたものだった。魔女しかいない街には、歩けば魔女しか使わないような道具や店がたくさんある。

 例えば、『道具貸し』という看板を掲げた店があった。入ってみると、そこには本当に沢山の、お裁縫に使う道具達が並べられていた。それから、大きな机がいくつかと、そこに座って手仕事をしている魔女達。上の階から聞こえてくるのは、機織り機が動く音だ。


「ここは、お金を払って裁縫道具を貸す店です。名のある魔女や鍛冶屋の針から、機織り機まで、大小様々に用意していますよ」


「道具を……貸す?」


 最初は、不思議な店だと思った。どんな魔女も、自分の魔法に使うための道具なら、自分の手に馴染んだ物があるはずだからだ。隣の道具屋は、裁縫道具ばかりを集めた店なのも、見かけたから知っている。自分の手に最適な布切り鋏や糸切り鋏を誂えてもらえる店だって、向かいの通りにあった。

 なのに、この店は道具を貸すのだという。普段使わないような針もあったので、少し借りてみることにした。


「じゃあ……この皮縫い針で」


「そちらは、厚手の牛皮三枚を貫ける針ですね」


「そんなに!? ちなみに……借りるお代と、買うとしたらおいくらくらいかかるかって、聞いてもいい?」


 さらりと告げられた金額は、安い借り賃に比べて中々の値段だった。魔都から借りた道具を持ち出すことはできず、最初に借りた期間を越える前に自分で返しに店まで来る必要はあるらしい。


「ちなみに返さないと、罰金として何か価値ある物と一緒に店に戻る魔法をかけておりますわ」


 さらっと怖いことを言われた。ちなみに、罰則回数が増えるにつれて、どんどん持っていかれるものは高価になるらしい。絶対忘れないようにしないと。


「ちなみに、物によっては買い取りも、相談次第ではできますよ。新品が欲しいと言って、同じ物の新品を買いに行く人もいますが」


「……なるほど、宣伝とかも兼ねているんですね」


 試しに使ってみて、気に入ったら買えば良い。そういう『お試し』を提供する店なのかとわかると、魔都以外でもやれば良いのにと思った。……店主が魔女じゃないと、ひとりでに貸した物が帰ってこないから難しいのかもしれない。


「もしかして、上から聞こえる機織り機の音も?」


「ええ。さすがに大きいので、織り機は店に備え付けですが」


 織り機を使うための席を、借りるような形になるらしい。気になってきたので、私は上の織り機も見せてもらうことにした。

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