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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
34章 クロスステッチの魔女はお上りさん

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第792話 クロスステッチの魔女、お風呂道具を新調する

 体を洗うように三種類の布を自分の肌にこすりつけてみて、感触を確かめてみる。真ん中くらいの硬さの布がちょうどいいと思ったので、店員の魔女に「この硬さがよさそうです」と話した。


「でしたら、色々な形と柄、色の布を用意しております。値札の横に、五つの花びらの花の絵がかいてあるのが、この硬さのものです」


「あ、確かに絵がついてますね」


 ぐるりと見回してみると、確かに見える範囲の値札にはすべて、値段の他に花の絵がついていた。花びらが四つのものは一番柔らかく、六つのものは一番硬いのだと言う。


「お金は多めにいただきますし、お時間もかかりますが、個別注文も承っております」


「個別注文?」


 店員の魔女はにっこりと笑って、色や形や硬さの指定だと教えてくれた。つまり、例えば私がどうしても欲しい物があっても硬さが合わなかった場合や、ここにない色は、相応の代金を払えば誂えに応じてくれるということらしい。まるで仕立て屋だ。


「じゃあ、まずはどんなものがあるか、じっくり見させてもらいますね」


 私はそう言って、店内をじっくり見てみることにした。布の形そのままに四角い物、泡綿の実を面白い形に加工した物、色も形も様々で、わざわざ誂えなんてしなくても十分な物があるように見える。


「こんなに色々あるのに、誂えをする魔女もいるのねえ」


「いるみたいですね」


「主様ー、これ触るとおもしろーい!」


「キーラさまのお好きなように選べばいいとは思いますが」


「わたくしたちには不要ですし、あるじさまが一番お使いになるものですものね」


 『《ドール》の肌を傷つける危険があるので、《ドール》には使わないでください』と書かれた注意書きを見ながら、そう呟いていたのはキャロルだった。陶器の肌の方が硬いのだけれど、細かい傷がついてしまうことがあるらしい。一番柔らかいものでも使用しないでください、とわざわざ書いてあるから、ここに並んでいるのは純粋に魔女だけが使うための物だった。《ドール》として警戒されているのはアワユキ以外の、陶器肌の子達のようなので、アワユキにはもしかしたらできるかもしれない。後で、アワユキが欲しがるものがあったら店員の魔女に聞いてみよう。


「私の分は……これにしようかな」


 私がしばらく店内をうろうろとして決めたのは、淡い水色の白い花びらが散った柄の四角い布だった。やっとひとつ決めて会計をしようとしたところで、一角に並べられた沢山の布が目に留まる。


『お風呂用・吸水性特化の体拭き』


『髪の毛用』


 ……これは必要なものだ。うん。そう思いながら、さらに私はどれにするか迷い始めた。

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