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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
34章 クロスステッチの魔女はお上りさん

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第790話 クロスステッチの魔女、魔女の花茶を楽しむ

 お湯を沸かしてから、新しいガラスのカップをお湯で洗う。魔法で綺麗にする。それらの作業をしてから、私は軽く窓の外を見た。まだ夕方と言うにはお日さまも高く、午後のお茶にはちょうどよさそうな時間だ。なので、ゆっくりと楽しむことにした。


「早速この、魔女の花茶というものを飲んでみることにするわ」


 それは見た目には、布包みのように見えた。中に紅茶が入っているらしく、鼻を近づけるとほんのりと甘みのある香りがする。紅茶の香りだ。これをカップに入れて、上からお湯を注ぐらしい。布包みはそのままで、ということは、この魔法の気配が何か面白いものを見せてくれるのだろう。

 ドキドキしながら、ガラスのカップの真ん中にしっかりと布包みを置いた。それから、お湯を注ぐ。


「まあ……!」


 布に織り込まれていた魔法によって、はらはらと布は一人でに崩れ、壊れていった。甘いお砂糖菓子の匂いがして、どうやら布だと思っていたあれは砂糖だったらしい。中の茶葉によってルビー色の液体がカップに溜まっていく中、その中身をはっきり見ることもできた。


「花の蕾? かなー?」


 アワユキが私の肩で首を傾げる。それは、何かの花の蕾のように見えた。何の花かは、今の見た目だけではわからない。けれど、白い花のように見える。そのままお湯を注ぐと、蕾にも魔法がかけられていたのか、はたまた何かのカラクリか――花が、一人でに開いた。実際に咲く時のように、紅茶の中で、ゆっくりと花開く。


「これは……すごいわね」


 この一杯の花茶を用意するだけで、どれだけの手間がかけられているのか。あんな値段で買っていいものでは、なかったのかもしれない。私がやや慄きながらそう呟いていると、花は完全に開いた。この白だろう花びらにこの形は……多分、白夢菊だ。私が住んでるあたりではあまり見ないけれど、魔都のあたりには、たくさん咲いているという。


「多分これ、もっと珍しい花を使った上級品がある気がします」


「いつかは見てみたいわね」


 そんなことを言いながら、お茶を一口飲んでいる。紅茶の味に布包みだったお砂糖と、白夢菊の蜜の甘みが添えられて、かなり好きな味だった。これが茶葉だけだったら、缶で買ったのだけれど。


「どうです? おいしいんですか?」


「ええ、また買いに行きたくなるくらい」


「よかったですね、キーラさま」


 うんうん、と頷くラトウィッジとキャロルや、《ドール》のみんなにも一口ずつ、お茶を飲ませてあげた。

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