表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
33章 クロスステッチの魔女と大雪の冬
766/1031

第766話 クロスステッチの魔女、対策を作る

 カバンの整理には、丸一日かかった。羊毛の毛がふた塊も出て来たので糸車で紡ぐことにしたり、カバンの中で魔力を吸って芽を出していた花の種の処遇を考えて《魔女の箱庭》に入れたり、色々とあったのだ。


「土もないのに、よく芽を出しましたね……」


「採取袋から落ちてたんだと思う。それで、カバンの中に満ちている魔力だけで芽を出したんだわ。ほら、こっちの種は魔力の関わらない普通の草だから、種のままだし。半年に一度くらいは、整理した方がいいかもねえ」


 確か今度作ろうと思って買っていた、手のひら大の小さな魔法のための図案。図案を束ねた中になくて、買った記憶を疑っていたものだ。これも、カバンの中ではぐれていたらしい。


「今の私とこのカバンに必要なのって、細かく縫った袋物だったりするのかしら……作ってみるのはいいかもね。時間はあるし」


 仕立物はあまりして来なかったとはいえ、簡単な袋物くらいなら縫える。同じような種や枯れ草、自分の書き付けが書かれた羊皮紙の切れ端がごっそり出て来たので、そんなことを決めた。それぞれをそれぞれの場所に入れてから、私は本で必要なものを確認して、資材部屋に行く。

 普通になめしてある革と革紐は何かと使うので、染めていない状態で持っていた。必要なら使う時に染めるための物だ。それから刺繍用の布を一巻きに、糸も持って来た。このふたつは、これから作る魔法のための物。雪で染めておいた白い布に、蜘蛛から分けてもらった蜘蛛糸を撚り合わせた糸だ。白に白だから、指先の感覚と針の位置で作らないといけない魔法。蜘蛛糸はそのままだと少しぺとぺととしているから、糸巻きを手で握り込んで、しばらく私の魔力を馴染ませてから針に通すことにする。


「マスター、よかったらお茶をどうぞ」


「ありがとう、いただくわ」


 紅茶を口にしてから、私は蜘蛛に似た魔法の模様を二枚の布に刺した。よく確認して、問題ないと判断してから糸の始末をし、その布を同じ大きさに革を裁つ。革紐を通す部分に合わせた大きさの穴を開けておいて、布と革のふたつを革縫い針で縫い合わせた。それから布が内側に来るようにして、袋になるようにかがり合わせていく。布が内側に来るように、採取袋や羊皮紙の束がすっぽり入るくらいには大きく。最後に革紐を通して口がしっかり閉まることと、魔法が発動することを確認した。逆さにひっくり返しても、中身が漏れてくることはない。

 予定通りに作れて笑った時には、多分、もう真夜中を過ぎていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ