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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
33章 クロスステッチの魔女と大雪の冬

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第762話 クロスステッチの魔女、雪晶を探す

 お目当てである魔法の雪晶は、欲しいと思って簡単に手に入れられる物ではない。普段の雪の量では、手に入る確率もものすごく低かっただろう。だから、こういう大雪の時は狙い目だと思っていた。


「主様が雪晶って呼んでるのはねえ、多分、精霊の息だよ〜。凍らせるお水が足りないと、たまにそうなるの!」


 アワユキからさらりと明かされた話に驚いたが、残念ながらぬいぐるみに入ったアワユキにはもう、雪晶を作ることはできないらしい。ぬいぐるみの体はちょっと脱ぐというわけにはいかないそうなので、地道に探すしかなかった。


「当面のお水には困らないし、久しぶりにたっぷりお湯を沸かしてお風呂にしても良いわね」


「最近は飲まないための水が少なくなっているからと、我慢されてましたものね」


「あとアワユキの丸洗いね」


「んみっ」


 ある程度壺が重くなったら、別の壺を出して――お風呂場なり台所なりに持っていく都合上、飲み水を入れた水瓶と違って持ち運べる大きさの壺を沢山用意している――そこに雪を入れ始める。重くなった壺は、暖炉の前に持って行って火に当てた。雪が溶けて水になった頃に、寒い廊下の水置き場に出しておく。ついでに飲み水の水瓶を覗くと、薄く氷が張っていたので、砕いておいた。


「主様ー、これ雪晶だよ!」


 しばらく五人がかりで黙々と探している時、不意にアワユキがそう言った。小さな手に摘み上げられているのは、確かに他の雪の結晶とは違う物だ。渡されたそれを受け取ってみると、薄青く光っている。そして、手袋を外した私の手の熱で、溶けなかった。


「これだわ!」


「やったー! あったー!」


 ぴょんと飛び上がったアワユキを撫でてやると、他のみんなもより一生懸命探し始めた。もちろん、私も探すけれど、時折雪を触りすぎた手が駄目にならないよう、指をわざと動かすのは必要だった。みんなの手に通っているのは血ではなく魔力で、冷えても鈍りはしないから、平然としていられるけれど。その分手は私の方が大きい。


「マスター、大丈夫ですか?」


「人間だった頃よりは丈夫になってるんだけどね。ちょっとあっためてくるわ」


 ルイス達の心配そうな目線を受けつつ、私は暖炉の前に水の壺と一緒に座った。少し赤くなってかじかむ両手のひらを炎に向けて、暖かい炎に強張りを溶かしてもらう。ほう、と息が漏れた。雪晶は見つかればもちろん嬉しいけれど、本当の理由は少し違う。冬で篭ってばかりの今、私は単純に、みんなで同じ何かをしたかったのだ。

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