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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
33章 クロスステッチの魔女と大雪の冬

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第754話 クロスステッチの魔女、雪の話をする

 年を越す夜には少し贅沢なものを食べるとはいえ、どこまで贅沢ができるかは蓄え次第。


「それにしても、こんなに沢山食べられる年越しなんて……いつ以来かな」


「つい、昔の癖でね。自分で干したりしながら、溜め込んでしまうの」


 人間の大きさをしているのは自分一人で、あとはみんな《ドール》。そもそも魔女の自分も、極論、食べなくてもある程度は平気。だから魔女の中には、見習いがいる年以外ロクに備蓄がない魔女もいるらしい。


「魔女様でも、そういうことをされるんですねえ。全部、魔法でなんとかするんだと思ってました」


「私は見習いを終えて、独り立ちしてまだそんなに経ってない頃だから。私自身が見習いを取るには、まだ若すぎると言われているあたりでなんとなくわからない?」


 魔女の制度の大元は、都会の職人の徒弟制度だそうだ――私は直接、見たことがないけれど。おそらくは職人だろうジャックに試しにそう言ってみると、彼も理解をしてくれたようだった。


「それで、一人暮らしをされているということですか」


「そういうこと。みんなもいるし、お師匠様の家もそこまで遠くないから、気楽なものよ」


 新しい年になった頃には、少なくとも人間を上げて問題のない家になるらしい。今頃ゆっくり食べてゆっくりしているのか、それともまだお掃除しているのかはわからないけれど、それを突っ込んで聞くのも野暮な気がしていた。あ、そういえば、ジャックにちゃんと話してなかったわ。


「ああ、そうそう。私のその、お師匠様がね。あなたのことを、そのうち引き取りたいと言っていたわ。私じゃ心配だって」


「でも、ご迷惑なんじゃ……」


「吹雪は弱まったかもしれないけど、吹き溜まった雪は当分残るわよ?」


 私の指摘に、ジャックは驚いた顔をした。


「雪が溶けるほど暖かくなってないんだから、当然じゃない」


「確かに……」


 本当に、雪に慣れていない地域の人らしい。かなり遠くから、よくもまあこんなところまで来たものだ。


「新しく増えなくなっても、今ある雪がそう簡単に消えるわけではない。魔法だって万能じゃないから、雪を全て消すようなこともできないわ」


 ものすごく強い魔女でも、魔法を使って自分が歩くあたりの雪を消すくらいだろうか。というか、それなら飛ぶ方が早い。足元の魔法は汚れてしまうと変わることもあるから、私がかけるのはお師匠様がいい顔をしないだろう。だから、歩きやすくする靴を作るようなことはできなかった。

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