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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
33章 クロスステッチの魔女と大雪の冬

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第751話 クロスステッチの魔女、新年祝いの準備をする

 少しずつ、吹雪の音は弱くなったり強くなったりを繰り返しながら、全体としては弱くなりつつあった。そろそろ、年越しの夜だ。ジャックは回復してきていて、今では普通の食事も食べられるようになっていた。


「お世話になりっぱなしで……」


 と恐縮しているようだったけれど、拾ったからにはお師匠様が引き取るまで、ちゃんと面倒を見るべきだと思うのだ。私は。


「年越しのお祝い、一応ちょっとは食べられるものを用意できてるからね。明日でしょう」


 雪の中に閉じこもっていると、日付と時間の感覚が薄くなっていく。簡単な日付を換算するための暦を見てみると、明日が年越しだ。


「いつの間に、そんなに……時間が」


「そんな状態だったら、人間でもそうなるわよ」


 窓も閉ざしてしまったから、光だってほとんど入らない。いつだって夜のような、昼のような中。もしかしたら私の石置き暦も間違っているかもしれないけれど、それを判断する術は……あ、お師匠様に聞けばいいのか。


「お師匠様、お師匠様。明日が年越しで間違いないですよね?」


『キーラかい。そうだね、明日が年越しだよ。それと、その人間のことだけど……』


 ジャックを引き渡せって話かな、と思ったのだけれど、『もうちょっとかかりそうだよ』と苦い顔で言われた。


「そんなに大変なことになっちゃったんです? お掃除」


『お掃除もだけど、今、急患が来ていてね。人間に有害な素材で手当てしている最中なんだ』


「それはダメですねえ……」


 お師匠様が『急患』というからには、何か大変なことになっている《ドール》がいるのだろう。《ドール》の修復には、様々な素材の選択肢がある。その中にはもちろん、人間に有害な素材も。


『というわけで、急患が落ち着いたらまた連絡するよ』


「わかりました」


 急ぎであるのなら、引き止めない方がいいだろう。私は頷いて、水晶の通話を切った。


「お師匠様ったら、急患が来ているみたい。だからやっぱり、年越しの祭りは私達でやりましょうか。ジャック、ちょっとは手伝ってもらうからね」


 私はご馳走の確認と追加分含めた調理。ルイス達はダメ押しの掃除。そしてジャックには、飾り作りをやってもらうことにした。少し染めておいた薄くて小さな革の端切れを、花びらの形に切ってまとめてもらう。革でできた花を机に置いたりすると、少しいい気分になる。春はまだ先なのに、少しそうなった気分だ。

 ジャックには鋏と革だけ渡して「花の形にしてみて」と、少し意地悪をしてみた。

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