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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
33章 クロスステッチの魔女と大雪の冬

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第749話 クロスステッチの魔女、お師匠様に相談する

 ジャックはしばらくの間、藁のベッドの上で寝たり起きたりを繰り返していた。どうやら、寒さにやられる前から酷く疲弊していたらしい。時折、起きている時に野菜スープやお湯割り蜂蜜酒を匙で口に突っ込んだから、死にはしないだろう。


「ジャック、また寝てるねー」


「そうねえ……冬眠してるみたい」


 そんな様子を横目に見ながら、新年の祝いの仕込みを少し増やしたり、魔法を少し作り溜めたりして、私たちも日々を過ごしていた。お師匠様にも、連絡を取る。


「……それで、ジャックと名乗っていました。どうしてあの吹雪の中を行動していたかは、わからないままです。まだほとんど、話せていないので」


『雪に慣れてるキーラでも、出歩かないようなお天気だったものねえ……』


「多少は靴に脂塗ったりしているようでしたけど、根本的に雪が降るあたりの人ではないと思います。服装が、雪ではなく風を防ぐものに寄っているので」


 色を塗っていない、雪闇に溶ける色彩の服。多少脂を塗りこんでいるとはいえ、雪に耐えられていない革靴。柔らかくて薄い革手袋。ウサギ毛皮の外套も、雪と戦うためにはもう少し厚みと丈が欲しいところだ。


「それに、荷物もろくなものではなさそうでした。背嚢がすごく軽かったので、食糧の手持ちも少なそうです」


『また厄介そうなのを拾ったね、あんたは……メルチは?』


「あ、それはされてないですね」


 ジャックはまだ、私が魔女であることを正しく認識しているかもわからない。最初に目覚めたあたりで一応説明はした気がするけど、彼はすぐに眠ってしまった。今も、起きている時の意識はかなりぼんやりとしている。あまり、話ができる状態ではなかった。だから、私も彼のことは名前しか知らない。


『それなら、あたしのところで引き取ってもいいけど――『ダメです! 今家の中、資材倉庫の大整理をすると仰ってご自分の寝る場所さえないではないですか!』――イースからお断り来ちゃった。しばらく面倒見ててくれる?』


「はい、構いませんよ」


 お師匠様のところは、色々と大変そうだ。見習いの頃に出入りしていた、資材部屋を思い出してみる。あれは魔法も使って拡げていた部屋だから、今頃、大変なことになっているはずだ。冬の最中、猛吹雪の天気で来客がないからこそ、そんなことをやっているのだろう。


『こんな時に出歩くなんてロクなものじゃないだろうから、用心するんだよ』


 お師匠様は心配気にそう言い残して、私との水晶の通話を終えた。

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