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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
33章 クロスステッチの魔女と大雪の冬

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第741話 クロスステッチの魔女、糸紡ぎを教える

 外からは雪が吹きつける音がする。本の理解を諦めて寝た後、恐らく朝になっただろう頃合いに目を覚ました。『恐らく』とつくのは、ぴったり窓を閉じて隙間に苔を詰めた結果、光が入ってこなくなったからだ。昔も誰かにそう言われた気がするけど、明るさと暖かさの両立は簡単ではない……普通なら。


「明かりは魔法でいいし、食べる物もいっぱいあるし、素材も色々あるし。この風の音だと今日もずっとこんな感じだろうから、今日はラトウィッジに糸紡ぎを教えることにするわ。みんなもおさらいね」


 はあい、と返事をするルイスや、嬉しそうにするラトウィッジの様子を見ながら、熱い紅茶と焙ったパンを食べた。いつもは冷めきる前に飲みきっていたけど、特に寒いので、いつもより強い魔法のかかった物を出してくる。お師匠様がお手本に作ってくださった、《保温》の魔法がかかったティーコジーだ。いつもの冬なら、私が見習いの頃に作った物で事足りているのだけれど。


「しばらくは、ポットにはこれをかけて頂戴。私ももうひとつ作りたいから、今度やるかしらね」


「わあ、細かい刺繍ですね……」


 魔法に関係のない装飾の刺繍も多いそれを、熱い紅茶を淹れてもらったポットに被せる。それから、スピンドルと綿の塊を出してきて、ラトウィッジに教えることにした。


「よろしくお願いします!」


「うん、元気でよろしい。とりあえず今は普通の綿で練習してもらうけど、そのうち、魔綿も扱ってもらえたらって思ってるからね」


「マスター、僕達も紡ぎたいので材料をお借りしてもいいですか?」


「いいよ、使って使って」


 気合いの入ったラトウィッジに、ひとつひとつの工程を見せて教える。キャロルやアワユキがスピンドルを扱うのは大仕事なのだけれど、幸いにも、ラトウィッジは元々の大きさがそこそこあるからか、あまり苦労はしなさそうだった。


「こう、ですかね……?」


「そうそう! ほら、こうしてここに溜まっているのはちゃんと、糸の形をしているでしょう?」


「本当です!」


 綿の塊から摘み出した糸端に始まって、コブもあり、荒削りながらも糸が紡がれていく。太くて針には通らなくても、それは確かにラトウィッジが紡いだ糸だった。ぱあっと顔を輝かせて喜ぶ姿がかわいくて、私も笑みをこぼす。


「よかったですね、ラトウィッジ」


「キーラさま! もっとやりたいです!」


 嬉しそうにそう言うラトウィッジに綿を分けてあげながら、私は自分の糸車にかけていた布を取る。その日は一日、皆でひたすら糸を紡いだ。

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