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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
33章 クロスステッチの魔女と大雪の冬
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第740話 クロスステッチの魔女、魔法の勉強に勤しむ

 外の大雪は、日が落ちるくらいの時間になっても止む様子がなかった。こんな日に蝋燭は万が一倒れると危ないので、魔法の灯りを灯す。私が前に刺していた刺繍がぼんやりと光を放ち、家の中をふわふわと飛び回った。刺し終わった布を蝶の形にしたのは、正解だったようだ。


「キーラさま、これからどうされるんですか?」


「引きこもりかなあ。さすがにこの天気で外に出て、うっかり遭難したくないし……こういう時になると、《扉》の魔法を使えるようになりたいと思うよ」


 だから魔法の勉強と実践かな、と話して、そういうことになった。久しぶりに聞く吹雪の音は大きいけれど、これくらいなら怖いとは思わない。


「《扉》の魔法は試す前に勉強しないといけないことが沢山あるって言ってたから、その辺が見れるようになっているといいんだけど……読ませてくれる?」


 後半は見せてくれない本とその封印に、ダメ元で頼んでみる。すると、魔法の気配がした。魔法の匂いの濃いあたりをめくってみると、今までまとめて糊付けされたように見られなくなっていた、後ろの方のページの一部が開けるようになっている。


「頼んでみるものね……」


 思わず、そんな言葉が漏れた。大きな章がひとつ、読めるようになっていて、扉のページには『空間を繋げる魔法について、事前に知っておくべきこと』というのが書かれている。


「よかったですわね、あるじさま」


「うん。いい暇つぶしができるわ……ルイス、熱い紅茶を淹れて頂戴。本を読むから」


「お夕食はどうされます?」


「うーん、本読みたいしいいかな」


 そんな風に話をしながら、羊皮紙のページをめくる。お師匠様の字が、一生懸命説明をしようとしてくれている言葉を、指でなぞった。


『空間と空間を繋げる《扉》の魔法は、大きく分けて照応と創造の二つに分かれる。ひとつは、すでにこの世界に存在する扉と同じものを作り、それと実際の扉を照応させ、同じものとして使う魔法。これは共通魔法であり、どの流派の魔女も自分の得意とする素材で同じ見た目のものが作れれば、扉として機能する』


「言ってることが難しいわ……」


 私には早かったかもしれない。一度本を閉じて、気晴らしに熱い紅茶を飲んだ。うん、頭がスッキリする。でも本の言ってることはわかんない。辛うじて読めるけど、意味が今ひとつわからないのだ。困った。とりあえずわからない言葉を羊皮紙の切れ端に書き付けて、分解したりして考えることにする。それでもわからなかったら、お師匠様に聞いてみよう。

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