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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
32章 クロスステッチの魔女とサプライズ

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第734話 クロスステッチの魔女、異文化を楽しむ

 モチというのは面白い食べ物だった。パンに似ているけれど、パンじゃない。こんなにみっちりとしているなら、手のひら程度の大きさでもお腹がいっぱいになれそうだった。事実、やや空いていたお腹がちょうどよく満たされつつある。


「豆……? これ、豆の粉なの?」


 豆の粉をまぶしたという黄色いモチの味に、素直に驚く。豆と言えば緑色の印象なので、まずその時点で妙な感じがする。砂糖と塩の粒が少々入っているようだけれど、豆の粉自体がほんのり甘いのだ。すごく、妙な感じだった。


(人間だった頃、こんな豆があったら取り合いになってただろうなあ)


 ぼんやりと、そんなことを思い出す。あの頃の、というか今でも、豆というモノはぼそぼそしていて、おいしい印象は全くない。パンに入っていると気が重くなるもので、シチューならまだ許せる。冬が厳しいときは、豆だらけの薄いスープを飲んだりしていたものだったっけ。


「私の故郷では、この豆で調味料を作ったり、こうやって砕いて入れたり、色々な料理に使っていますよ」


「豆がねえ……」


「豆入りのモチも持ってきたんですけど、そっちはあんまり売れないんですよね」


「ちょっと嫌かなあ」


 見せてもらった豆入りのモチは、黒い豆が入っていて、私の知っている豆とも違うようだった。しかも、粒が大きい。ううん、これだけ大粒の豆だったら、こちらよりいい扱いを受けているのだろうか。


「主様ー、食べてみたーい」


「豆入りだよ? いいの?」


「ちょっと気になります」


 アワユキが言い出し、ルイスが賛同。他二人も頷いていた。ううん、私としては豆入りにお金をあんまり出したくないのだけれど、銅貨一枚追加だけならまだいいか……。《ドール》たちに豆入りのモチを買ってあげて、私は様子を見ていることにした。今度はしょっぱい方がおいしいから、ということで、店員の魔女が茶色いソースを軽くかけたモチを《ドール》たちに手渡す。


「どう? ……おいしいの? それ」


「おいひー!」


「お豆がほくほくしていて、おいしいですよ」


「ちなみにそのソースも豆でできているの」


「東の人達ってそんなにお豆が好きなの?」


 思わず漏れてしまった言葉に、店員の魔女はくすくすと笑う。本当に豆をよく使うらしいから、こちらでの豆の扱いには少し悲しいものがあるんだとか。ただ、本当に種類が違うそうで、この辺りで手に入る豆を使っても同じものはできないのだと教えてくれた。


「それに気候が違うから、多分、同じような豆は育てられないかもしれないのよね」


「なるほど……」


 気候は仕方ない、と私も頷いた。

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