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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
32章 クロスステッチの魔女とサプライズ

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第728話 クロスステッチの魔女、《夜市》をうろつく

 まち針を一通り見終わって屋台を出てからも、沢山の魅力的な店が私達を待っていた。まだ今年の《夜市》に足を踏み入れたばかりなのに、灯りや賑わいを見ているだけで楽しくなる。ついでに、財布の紐も緩くなりかける。


「鋏屋だよー、研ぎもやってるよー。注文打ちは要相談!」


「《ドール》のための小型家具を揃えているよう、これから新しい子を迎えるならどうかね?」


「魔女用の服、仕立てまーす。《ドール》とお揃いの服も用意できますよー」


「寒い夜にはこれだよー、ショウガ入りクッキー! 魔法でいつまでも焼きたてのアツアツ!」


 屋台を覗き込み、面白そうなものがあれば冷やかし、場合によっては買っていく。思っていたよりやや大きかったショウガ入りクッキーを食べながら、粉が落ちてはならないところに気を使うのは少し大変だった。まあ、おいしかったから良しとする。


「あるじさまー、飴だって! 食べたーい!」


「わぁ、キラキラしてるし、綺麗な飴ね! 《ドール》たちにあげたいの。おひとつくださいな」


 アワユキがねだってきたのは、飴で凝った細工を作る魔女の屋台だった。それ自体が、魔法でもあるのだろう。飴はどれも、夜の中にあってほんのりと光っていた。


「《ドール》に優しい魔女には、一本おまけしてあげる」


「本当? やったー!」


 黒い長手袋をした手が、一本分の銅貨を受け取って二本渡してきた。向こうがそう言うのなら、とありがたくいただき、みんなで分けて食べる。


「ああ、飴なんて久しぶりで……あれ、アワユキ光ってない?」


「光ってるー?」


「光ってる光ってる。え、店主さんこれは大丈夫なんですか?」


「お腹の中で飴がこなれるまでは光ります。まあ、一夜の夢ですね」


 周りのお客も、飴を舐めたら魔女も《ドール》も関係なくほんのり光っていた。アワユキの光が強いのは、沢山食べたからだろうか。私の指先も、ほんのり光っている。それは屋台の軒先で揺れる灯より儚く、頼りない光だけど、灯りが少ないところでは目立ちそうな光だった。帰りとか、役に立ちそうだ。


 《名刺》をもらって飴屋の魔女とは別れた後、今度はさらに色んなものを見た。魔女用の服や三角帽子、装飾品として宝石細工を並べる魔女。《ドール》のための服や装飾品、靴を並べる店。そして沢山の、――私には用途がさっぱりわからない物も含む――お裁縫や細工物に使う、色々な物の店。それらは、世界にはこんなものがあるのだと、私の世界をこじ開けてくれた。

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