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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
32章 クロスステッチの魔女とサプライズ
724/1032

第724話 クロスステッチの魔女、今年の初雪を迎える

 それからしばらくは、穏やかな日々が流れた。近づいてくる冬の支度をしながら、必要な物を用意する。薪に、枝に、食べ物。魔法。今年も篭ろうと思うから、その間に作りたい物も。またあの温泉街に行きたいな、と思ったけれど、今から行ったら雪が深くなる時期にやっと辿り着くことになる。来年こそは行こう、と決めておくことにした。石板に石筆で、忘れないように書いておく。


「マスター、枝拾って来ました」


「もうすぐ雪が降るよー」


「ありがとうね。あっ、アワユキが言うならそうなのね? 今年は早いわね」


 薪や枝はそれなりに集まったところで、初雪を迎えた。ちらちらと降ってくる雪を、家の中から眺める。ラトウィッジは初めての冬だからか、窓枠に腰掛けて窓の覗き穴から外をしげしげと眺めているようだった。


「ラトウィッジ、みんなで暖炉にあたりながらお茶にしましょうよ」


「はぁい」


「窓にはちゃんと、そこの透かし苔を詰めておいてね」


 光を透かすけれど熱は通さない透かし苔は、山での暮らしを格段によくするための物だ。この間見つけたので、乾燥させておいたのはやっぱり正解だった。詰め終わったラトウィッジが私達のいる炉端に来たので、熱い紅茶を彼にも注ぐ。


「ラトウィッジ、お砂糖はいる?」


「ひとつください」


 熱い紅茶を飲みながら、赤々と火が灯る暖炉の側で温まる。時折、よく乾かした薪を足してやりながら、お腹が空いたら乾燥肉を炙ってもいい。夜が近づいたら、鍋に材料と水を入れて暖炉に置いておくだけで、これもまた立派なスープになる。


「あるじさま、今は何を作っていらっしゃるの?」


「ちょっとまた、別の魔法に挑戦していてね」


 年越しの祝いのための贈り物を五つ、そろそろ用意しなくてはならない。《魔女の夜市》がまた近づいてきているから、そこで決めてもいいけれど……今年は私が手作りしようかな。

 ちなみに、作っている魔法は《幻影》の魔法の一種だった。魔力を通すと、たとえ冬でなくても雪景色が見える魔法の布になる予定だ。ちらちらと少量が降ってくるだけなら、綺麗だと思って眺めていられる。


「ラトウィッジには初めてだから、改めて話しておくんだけどね。もうすぐ《魔女の夜市》があって、大きな市が立つのよ。ラトウィッジの目を売ってくれたお店もきっと出るでしょうから、もし行けたらご挨拶させてもらおうと思うわ」


「この目の……それは、楽しみです」


 そんな話をしながら、私はもう一口、熱いお茶を啜った。

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