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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
32章 クロスステッチの魔女とサプライズ

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第722話 クロスステッチの魔女、夜の採取をする

 私がみんなの様子を見守りながら採取していると、いつの間にか日が翳ろうとしていた。あっという間に夜の足音が近づいているけれど、せっかくなので、このまま彼らがどうするか見守ることにする。これは、単純な興味だった。


「あっ、いいの見つけた!」


 そんなことを考えている間も、木の幹に絡んでいた蔦の先端を切って自分のものにする。これは水に晒して繊維を取ると、綺麗な薄緑色の糸になる。本で読んだことはあったけれど、こんなところに生えているとは思わなかった。しばらく必要な予定はないから、手のひら分だけ切っておく。


「マスター!」


「もうお日様がさよならしちゃうの!」


「もうちょっと探していてもよろしいかしら?」


「魔法で危なくないようにはしますから!」


 四人が走ったり飛んだりして声をかけてきた様子に、私は頷いた。私自身も《夜目》の魔法を使いながら、もう少し森にいることにした。ここは他の魔女達が魔物を狩っているのもあって、かなり軽装でのんびりと歩いても問題がない。


「さすがに、月が一番上に来る前には帰るわよー」


「はあい」


「わかりましたー」


 そんなことを声かけすると、間延びした返事が返ってきた。夜は夜で、夜にしか咲かない花があったり、星や月の光を蓄えて光る石がある。もちろん、すべてを狩り尽くさないようにとは教えてあるから、それら全部を持ち帰れるわけではない。この森は、私だけの森ではないから当然のことだ。

 光る石を拾い、銀色の葉を一枚摘み取り、あれやこれやと考える。これから何を作るかは、今、パッとは思いつかなかった。だから、必要なものを摘み取るというのとはできない。必要そうなもの、これから使う可能性が高いものを集めて袋を満たしている間、ふと上を見上げると月がかなり枝の、上の方に来ているのがわかった。


「みんなー、そろそろ帰るわよー」


「「「「はーい」」」」


 いいの採れたかしら、なんて本当は聞きたいのだけれど、そうしたらこの子達は、自分のために採った物を私に差し出してくるかもしれない。そんな感じがしていたから、私は詳細を聞かなかった。みんなは聞いて欲しそうな顔をしているけれど、ぐっと心を鬼にする。私が欲しい《ドール》は意思ある存在であって、ただ私に盲目的に従う存在が欲しいなら、《核》なんて入れてないのだ。


「マスター、帰ったらお紅茶を淹れますね」


「すごーく楽しかった! やってるのは、いつももそんなに変わらないのに!」


「ええ、いい経験になりましたわ」


「またやらせてください」


 本当に楽しそうに言うから、私も「いいわよ」と返事をするのであった。

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