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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
31章 クロスステッチの魔女と魔法の失敗
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第711話 クロスステッチの魔女、石を砕こうとする

 シャベルで星屑石の塊をふたつ切り出したところで、今日の用件を終えた私は帰ることにした。塊に癒着してしまった石を剥がすためには、このような頑丈なシャベルひとつでは足りなくなる作業が必要になると目に見えている。


「帰ったら、どんなやり方がいいか試してみないと」


 さすがにこんな塊では、儀式はできない。みんなが小さいものを拾い集めてはくれていたけれど、必要なだけ採れていない可能性もある。一応私も、小さくてくっついていない石はいくつか拾っておくことにした。


「さて、香木のこともあるし、帰りますか」


「また来たーい」


「それならせめて冬じゃない季節にね。春になると咲くのも、いくつか見かけたから」


 とりとめもない会話をしながら、私は箒に跨ろうとする。くるりと回転させた拍子に、房にしていた干し草が数本抜け落ちた。魔女の箒は、その辺りの家で掃き掃除に使われているような箒とは違う。ちゃんと魔法が込められているから、中身が落ちることは少ない。一応気をつけて帰ることにして、家に着いたら房の方も手入れをしてやらないと。


「ほら、乗って乗って」


 四人がそれぞれの位置に乗るので、降り立ったところから今度は地面を蹴る。飛び込んだ星空は、空の端っこに夜明けの気配を漂わせていた。


 家に着くよりは、夜が明ける方が早かった。空が本格的に白んできた時には一度地面に降り、《夜目》の魔法を取る。みんなも私を真似てそうしたから、それから目が元に戻り、昇ろうとするお日さまに目が眩まなくなったことを確認してから、家路に向けてもう一度箒を飛ばした。


「はー、やっと家に着いたわ」


「お紅茶は飲まれますか?」


「そうね、とびきり熱いのをお願い」


 淹れてもらった熱々の紅茶を啜ってから、カバンに入れていた星屑石の塊を机に置く。家にしまい込んでいた魔法をいくつか出してきて、これらの石を本来の通り、バラバラにできないかを試すことにした。

 もう一度、《頑丈》なシャベルで叩いてみる、半分失敗。塊が半分に割れたりしたけれど、それ以上は追加で叩いてみても傷がつくだけだった。

 《粉砕》の魔法は……一番小さな塊に使ってみたところ、弱めに作っておいたにもかかわらず、本当に粉砕されてしまった。これはこれで使い道がありそうだけど、今欲しいものではない。

 木工用のトンカチに《頑丈》の魔法をかけて叩くと、やっといい感じに取れてくれた。同じ要領で何度も石を叩き、それぞれの石の本来の大きさに戻しておく。儀式に足りるどころか、少し余るほどの石が無事に手元に残った。

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