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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
5章 クロスステッチの魔女、冒険する

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第71話 クロスステッチの魔女、石拾いを楽しむ

「足元石だらけやから、転ばんように気ぃつけや」


「川に落ちるのは怖いものね」


 そんな会話をしながら、私達は川の側に来ていた。豊かな水を湛えてキラキラと光る、さほど広くない川。足元は石ばかりで、少し流れが速い。


「川に落ちると、どうなるんですか?」


「ええ質問やねアウローラ。落ちると水に流されてどこまで行くことになるかもわからへん可能性あるし、何よりここらの川床は石ばっかりや。《ドール》の肌が傷ついたり、新しくした目にヒビでも入るかもしれん。うちが抱っこしとらん時に、川に近寄っちゃあかんで」


 それを聞いた《ドール》達は、怖がったようにそれぞれのマスターの服の裾を掴んで来た。かわいい。私は安心させるようにルイスを抱き上げ、「ルイスも飛べるから大丈夫って過信しないで、気を付けてね?」と言った。


「はい、わかりました、マスター。僕はいい子なので、大丈夫です」


「うんうん、よろしい」


 そう言いながら、私は歯車細工の魔女と一緒に、足元に気を付けながら面白い石がないか探すというのを始めた。石を砕いた粉は糸や布を染めるのに使うこともあるし、宝石から糸を紡ぎ出す魔女もこの世にいるという。刺繍の一門であっても、単純に、綺麗な石を見ているのは好きだ。人間だった頃を思い出して楽しい。


「川によっては、砂金の粒を見つけた人間もいたって聞いたことあるわ。案外色んなものがあるのかしらね、川って」


「山の中から水が流れ出る時に、石のカケラとかを持ってくる……って聞いたような気がするわぁ、確か。あ、見てみぃええもん見っけたわ」


 歯車細工の魔女に呼ばれてそちらに近づくと、彼女はゴツゴツとした無骨な石を持っていて見るように促していた。石は握りこぶしよりは少し小さなもので、灰白の普通の石のように見える。魔力も感じない、私にとっては「普通にその辺にある石」だった。


「これ、ここ。よく見るとちょっと、綺麗な緑色の粒があるやろ?」


「確かに、綺麗な若葉色」


「これ多分、翡翠……花翡翠やろうな。それが普通の石にくるまれとるから、うまく取り出せたら使えるかもしれん」


「おおー」


 私にとっては普通の石に、小指の爪先ほどの綺麗な緑色がくっついているだけにしか見えなかったのに。歯車細工の魔女にとっては、持ち帰るべき大切なもので、その見方の差が面白かった。


「私ももうちょっと探してみる!」


「あ、じゃあうちも面白そうな草あったら抜いとくわ」


 お互いにそう言い合いながら、楽しく辺りを探し回る。先ほどの石のように綺麗なカケラを含んだ石というのをいくつか見つけ、上機嫌でカバンにしまっていた私がふと少し目線をあげると、何かの空洞が山肌に空いているように見えた。

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