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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
31章 クロスステッチの魔女と魔法の失敗

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第704話 クロスステッチの魔女、新しい魔法をかける

 山登りに行くだけだから、荷造りは大したことなく済んだ。少し休んでから刺繍に間違いがないことを確認し、糸の始末をする。


「よし、完成! 出かける前に、せっかくだからこの魔法を使ってからにしようっと」


 私はそう言って、荷物をカバンに詰めて家を出た。日が出ている時間帯とはいえ、曇っているから発動しないことはないだろう。この魔法は外側からかけるのに向いていると本にあったし、家の中には本来の家主である魔女がかけている魔法がある。前のと違って強い分、元の魔法と絡み合わないように、注意を払ってやらないといけないのだ。

 魔法が絡むと何が起きるか、ターリア様さえご存知なくなるという。それだけ千差万別、同じ魔法二つを絡めても同じ結果は起きない……そう脅されたから、慎重だった。錠前代わりの簡単な魔法とは、訳が違うのだ。


「庭も一緒に範囲に入れて……元の魔法とぶつかり合わないように……」


 糸が煌めく刺繍に魔力を流し込み、魔法へと変化させていく。私が作った《堅牢なる守護》の魔法は、作り主である私か、鍵となるこの刺繍をしたのと同じ針と糸と布で作った小さなお守り袋の持ち主しか通れなくなる。この手の魔法にあるような、侵入者を迎撃するようなものは組み込まなかった。その必要がないからだ。私が欲しいのは、大水や地揺れから家を守る力だけだ。


「これで、魔法ができたんですか?」


「ええ、ちゃんと働いたわ。庭にも効いてる」


 ちなみに、庭と言ってもお師匠様のように、地面にも何かを植えているわけではない。最初は野菜を育てようとしたのだけれど、あちこち長らく旅をする私に移動しない庭の世話はできなかった。今は伸びるに任せて、役に立ちそうなものがあったら摘み取っているだけだ。枯れるも育つも、お天気と植物のやる気次第になっている。今軽く見ただけでも、人参やキャベツが先祖返りしてわさわさと生えていた。時々魔法を作るのに使った水をここで捨てているからか、最初の頃に普通の野菜を植えていたはずなのに、やや魔力を含んでいる感じもする。


「それじゃあ、行こうよう」


「のんびりしすぎて、あるじさまの指が銀色のままだったら大変だわ」


「それはダメだと思います、キーラさま」


「わかった、わかったわよ。ほら、乗って」


 四人を箒に乗せて、軽く地面を蹴って浮き上がる。いつもより心なしか勢いよく魔力が流れ込んで、久しぶりに急加速をやらかしかけながらも私達は空へ浮き上がった。

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