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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
31章 クロスステッチの魔女と魔法の失敗

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第702話 クロスステッチの魔女、新しい魔法を刺し始める

 お師匠様は「このあたりに危険の予知はないと思う」と言っておられたけれど、準備もしていたので《堅牢な守護》の魔法は作ることにした。一晩の間、満月の光に晒した針と糸と布。これらを翌朝、月が沈んだ後に引き上げた。


「銀色になった指、少しずつ動きにくくなることはあるんだって」


「それ、大丈夫なんですか?」


「運が悪いと、みたいだから……多分、大丈夫でしょう」


 そんなことを考えながら、指の付け根に一応魔法のリボンを巻いておくことにした。刺繍してある魔法は、随分と前に練習で作った《治癒促進》のものだ。多分、それなりに効果があるだろう。


「月の光と水に晒していたこれらを乾かすのに、お日様の光を浴びせると効果がおかしくなるらしいから……魔法で乾かしてから、刺し始めるね」


 《乾燥》の魔法で服を乾かす時のように、針と糸と布を乾かす。そうして綺麗になったことを確認してから、二本の刺繍糸を取って針に通した。中心点を決めて、一目を刺し始める。


「マスター、魔法の本を僕も見てみたいんですがいいですか?」


「そう? それじゃあ、こっちの本なら見ていいわよ」


 お師匠様からもらった三等級の魔法を載せた本は、今、魔法を刺すのに必要なので貸せない。なので代わりに、四等級の魔法や上級魔法の概要が載っている本を渡した。強い魔法については概要があるだけだけだから、あまり変なことにもならないだろう。


「本を読み始める前に、紅茶をポットに一杯くれる?」


「はい、かしこまりました」


 ルイスにお茶を淹れてもらってから、私は刺繍に本格的に取り掛かる。銀色に染まった指が魔力に反応してぴりぴりするけれど、これが普通のことなのかはわからない。心なしか、いつもより魔力が多く籠められているような感覚もあった。もっとも、それがどこまで通常でどこまで異常なのかはわからない。ある意味、銀色に染まった指に対して利点があったのかもしれないと思うと、悪い気がしなかった。


 つい、鼻歌を歌いながら刺繍を刺す。真面目に作るものではあるけれど、この辺りに災いの予知がないと言うのもあって、少しは気楽にすることができた。一目一目刺している間に、糸が少しキラキラと輝いていることに気付く。どうやら、正しく満月の光が染み入った結果、こんな素敵な見た目に変わるらしかった。


「マスター、もう今夜は半月ですよ。そろそろ、指の色を戻す儀式の準備をしなくてはいけません」


 そう言われたのは、もう少しで刺繍が出来上がりそうな頃合いの時だった。

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