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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
31章 クロスステッチの魔女と魔法の失敗

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第700話 クロスステッチの魔女、儀式のやり方を聞く

 銀月の実は染料として、魔法として強い力を持つ。具体的に言うと染み入ったモノを大抵は鮮やかな銀色に染めてしまい、おまけに落とすには儀式が必要なのだとか。搾り汁を受け止める時に木の器を使ってはいけないのも、器が銀になるからだ。それはそれで王様の食卓のような気分になれるし、銀メッキの中にはこの汁を使っているモノもあると本にあった。もっとも、焼き物や金属の器では染み込まないから、本物の銀の器のフリはできないらしいけれど。


「ちゃんと、私が渡した本に書いてあったろう! 初めての素材は慎重に扱うんだよ」


「本の通りに真新しい布で搾ったので、この通り銀色の布はできました」


 証拠に出してみせると、お師匠様も「一応読んでたんだね……」と思い直してくださった。よかったよかった。布の隙間から少し漏れた液体が、私の指にかかったらしいのだ。濡れた感覚もなかった。


「それでこの指、いつ綺麗にできますか?」


「新月を待つんだよ。この後すぐの新月を逃すと、丸一年銀色のままだからね。二回目の新月には効果がないから」


 ちゃんと渡した本に載ってるよ、と言いつつ、儀式のやり方をお師匠様はちゃんと教えてくださった。

 まず、月が食べ尽くされてなくなった新月の夜を待つ。そんな夜になったら、新品の焼き物か金属の器を用意し、その中にカロリナの香木を焚いた煙を満たす。この時に必ず、魔法ではなく、黒曜石で切り火を熾して焚くこと。水晶と星屑石を器の底に敷き、煙の中に染まってしまった部分を入れて一晩、色が抜けて雫となり、垂れて落ちるのを待つという。


「動かさずに、じっと待つんだよ。横着をしたりすると、色が抜けないことがあるからね。あたしの知ってる魔女も一人、指を染めちまって儀式をしたんだけど……早く作業に戻りたくて指をぶんぶん振っていたら、爪がどうやっても銀色から戻らなくなったというからね」


「それ、私の知ってる魔女です?」


「さあねえ」


 教えてはくれなかった。今度会う魔女の指先を、見てみようかなんてすぐに忘れそうなことを考える。もっとも、爪を染めてる魔女なんて珍しくないから、少し見ただけではわからない気もした。


「それで、新しい魔法を試そうとして指も染まった感想は?」


「昔に着ていた服が真っ赤になった時よりマシかなーと思ってましたが、洗えば取れるだけアレはマシでした。気をつけます」


「わかればよろしい」


 ついでに少し、聞いた警告や個人依頼の話をしようと思って。私はお師匠様を、夕方のお茶に誘った。

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