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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
30章 クロスステッチの魔女と納品騒動

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第697話 クロスステッチの魔女、魔法を探す

 年越しでもないのにおいしいものをいっぱい食べて、少々の罪悪感と背徳感を覚えながら、心地よい満腹感の中でお茶を飲む。せっかくなら新しい方はお茶菓子と飲みたかったから、いつもの茶葉で淹れてもらった。


「マスター、本当に新しい茶葉じゃなくてよかったんですか?」


「んー、そりゃあ確かにあっちも気になるけど……今お腹いっぱいで、頭もふわふわしてるから、飲むならそういう時じゃない方がいいのよ。だってその方が、ちゃんとお茶の味を楽しめるし、お茶菓子もつけられるからね」


 私はほう、とため息をつきながらそう言った。今は飲み慣れた味の方がいい。どんな魔法を使えば『備え』になるか、本をめくろうとしている今なら。

 四等級になる前――修行中の頃は、本の読み書きなんてほとんど習うだけで、練習も兼ねて渡された本を読んでいるだけだった。その中には物語の本だけではなく、魔法について書いてある本もあったはずだけれど、あまり熱心に見ていた記憶はない。だって、お師匠様が教えてくれたから。本を見ろ、とは何度も言われたけれど。

 無事に試験に受かり、一人で暮らすようになった。その時に、本というものの有り難みを悟った。何か昔に聞いたことをうまく思い出せない時に、本はいつでも待っていてくれたのだ。今はルイスが私より読み書きを得意としていて、そこから分かれたキャロルも学があるから、なんだか前よりも気軽に本を頼れる気がする。


「今まで割とほっぽってた戦闘用の魔法も含めて、最初から最後まで読んでみて探すことにするわ」


「きっと、いい魔法が見つかりますよ」


 強力な魔法がかかった、特別な本というのもこの世にはあるらしい。本そのものがページをめくる人の心を読み取り、もっとも適切な一ページを出してくれる、とても強い魔法を書いた魔法の本。とはいえ、そんなものはお師匠様も持ってない。半分伝説のような、『魔法ってそこまでできるんだ』と思わせてくる存在だった。

 まあ、そんなないものねだりをしても仕方のないこと。うちにあるのはただ、試験に合格しないと新しいページを見せてくれない本だ。これを私に許される範囲で、最初から最後まで通して読む。気取った書体はまだ苦手だけれど、昔に比べたら読めるようになってきた。


「いい魔法ありました?」


「まずは今ある防御系の魔法を増やして、替えを作るのがいいかも」


 今使っている魔法より防御を高められる魔法は、残念ながら火や水や怪我や、特定のものに対してより効果を発揮するものだったのだ。物事は簡単には行かないらしい。

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