表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
30章 クロスステッチの魔女と納品騒動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

688/1038

第688話 クロスステッチの魔女、思いがけないものを見つける

 糸を紡いでは、ひとかせごとに纏める、ということを繰り返して数日。さすがにずっと紡いでいると、糸を撚っている指先も痛くなってきた。夜通し紡いでいたら疲れもするので、そういう時は素直に休んでいた。


「マスター、そろそろ先に綿がなくなりそうです」


「えー、たくさん育てたのにぃ」


 私はそう言いながら、確かに少なくなってしまった綿の塊を軽く触った。かなり用意しておいたはずなのに、気づけばもうほとんどない。ひとかせ紡ぐには、絶対に足りない量だ。


「また育てないと……あんまりやるとやっぱり傷んじゃうみたいだから、沢山はやれないんだけどね」


「主様ー」


 そんなことを考えていると、いつの間にかアワユキが私を呼んでいた。


「どうしたの?」


「魔綿、ふかふかのあったよ?」


「え」


 倉庫部屋の中身は整理して、ないって確認してから魔法で育てたんだけどな。とはいえ、忘れてる可能性があるかないかと言われたら……否定できない。


「どこにあったの!?」


 こっちこっち、と案内されたのは、倉庫部屋の奥まった一角。そこには埃を被った袋があって、開けてみると確かに魔綿があった。干し終えた綿の実を袋に詰めて、糸以外でも使えるようにと溜め込んだまま、どうやら忘れていたらしい。


「ま、まさかこんなに収穫したのを忘れてたなんて……!」


 思わず膝から崩れ落ちてしまった。何せ、家中の綿糸を使い、魔綿の実を使っても足りないと思って、必死に魔法で育てたのだ。幸か不幸か、多分、これだけあれば足りる。


「見つけたらアワユキ、えらい?」


「すっごくえらい……私は不甲斐ないよぉ……」


 てへへへ、と笑うアワユキの毛並みを撫でてやってから、私はこれからを考えることにした。とりあえず、これだけある綿の実をすべて糸にしてしまえば、今回の依頼分は紡ぎ終えられるだろう。大きめの袋に入っていたそれを糸車の前まで持って行く。


「マスター、どうしたんですか? わぁ、全部綿だ!」


「忘れてたの……紡いでたのに……」


「これで足りそうですかね?」


「まあ。でもわたくしたちも探したつもりでしたのに、見つからなかったから仕方ありませんかと」


 三者三様の感想を言われながら、私は新しい綿の流れを整え、机の上に残っていた綿と一緒に糸車に設置する。


「マスター、再開される前に少し、何かお食べになられてはどうです? 干し魚とお野菜で、シチューを作りますから」


「確かに……パンと紅茶ばっかりだったものね。お願いできる?」


 作業を再開させる前に、食事をする時間くらいはあるはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ