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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
29章 クロスステッチの魔女と蒐集家の魔女
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第657話 クロスステッチの魔女、《核》を待つ

 私が用意した《ドール》のことを、イルミオラ様はまず自分の手元でよく眺められた。


「この子、どうして裸なの?」


「性別の色をなるべく消した《ドール》ということでこの体を買いましたので、《核》を入れてから服を用意しようと思ったんです」


 見ていて少しいたたまれなくなってきたから、後で軽く布を巻きつけるくらいはしておこう、なんて考えたりもしている。どこだかは忘れてしまったけれど、どこか外国では四角い布を巻きつけて、鋏も糸も針も使わずに服にしてしまう風習があると本で見たことがあったことを、思い出した。そういうものを目指してみても、悪くはないだろう。


「顔は話に聞いていたけれど、少し古いのね。でも傷もないし……本当にこれが、不法投棄されていたの?」


「はい。《天秤の魔女》第五席、棒針編みの二等級魔女ガヘリア様より、捨てた犯人の魔女に引き取る気がないからと、いただきました」


 こんなに綺麗なのに、と私が呟くと、イルミオラ様も「そうよね」と返された。


「この頭には一度、《核》を入れられて目覚めかけた経験が残ってるわね。《核》の名残の色がある。これと反発しないようにした方がいいから、種類をいくつか絞るとして……」


「あたしが知ってる中じゃあ、あんたが一番多くの《核》を持っている。普通の作りたての《ドール》はどんな《核》でも問わないし、普通の中古もそうだ。でも、その子は《名前消し》があったとしても、状況が状況だからね。もしかしたら、《核》の選り好みがあるかもしれないと思ったんだよ」


 お師匠様の言葉を、聞いているのかいないのか。ぶつぶつと呟いて考え事を始めている様子のイルミオラ様を横目に、彼女の《ドール》がメレンゲの菓子を薦めてきたので、ひとつ摘む。サクッとした食感は好きなのだけれど、メレンゲを上手に作れないから、私には出せない味だ。


「何個か、使えるかもしれないものを持ってくるわね」


「ありがとうございます!」


 突然立ち上がったイルミオラ様が《核》をおそらく取りに行くのを、私は椅子に座ったまま待つことにした。中を案内するとは仰ってないのに、勝手に奥に行くような無粋はできない。


「お茶菓子の種類、今度増やしてみようかな」


「どうにもダメだったら、《付加珠(オプション・ジェム)》って手もあるわよ。ルイス達でも使えるはずだから」


 確かにルイスの《核》は特殊とはいえ、使えないわけではないらしい。


「まずは、自分で作ってみます。どうにもダメだったら、その時に買います」


「健闘は祈っておくからね」


 そんな話をしていると、イルミオラ様が箱を手に戻ってきた。

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