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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
29章 クロスステッチの魔女と蒐集家の魔女
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第652話 クロスステッチの魔女、お茶に招く

 私は受け取った瞳をしげしげと眺める。黄色……というより、よくしっかり見てみると緑色だ。それと水色が絶妙に混ぜられ、銀の花の模様が散っている。中の黒い目もしっかりと作り込まれていて、動かしてみると目を合わせるような動きをしたことに私は驚いた。


「すごい……!」


「ありがとう。目を追いかけてくる瞳になったから、せっかくだからお若い子に差し上げようと思いましてね」


 メリンダ様は仮面の下でも、誇らしげにしているのがわかった。


「嵌め込む向きによって、青い目にも緑の目にもできます。ちょっと高価な分、実質ふたつのアイを買ったと思って楽しんでくださいな」


「本当に素敵ですね、メリンダ様! 応募してよかったです」


 私が「よかったらお入りください、お茶をお出しします」と言ったのに対して、彼女は少し考えた後頷かれた。仮面は顔の上半分を主に覆う形になっていて、口のところはあまり覆われていないのもあって誘ってみたけれど、もし難しいようだったらお茶の葉とお菓子をお渡ししようと思う。


「ルイス、お客様よ! 一番いいカップでお茶をお出しして」


「はい、マスター」


 振り返って奥にそう言うと、ルイスが熱くておいしい紅茶を淹れてくれていた。もちろん傷ひとつない、お客様用のカップにだ。メリンダ様を中にお通しし、椅子をすすめる。向かい合うようにして私も座り、私達の間には小さな机と、たまたまその上に置いていた新しい子の姿があった。体と頭を魔法糸で繋げる用意をしていて、届いたら瞳を入れ、髪をつけて、後は《核》だけになるようにしておくつもりでいた子。


「わざわざ、新しい子を買ったんです?」


「ええ、せっかくですもの。付け替えで買われる方が多いんですか?」


 そうね、と言いながら、器用にメリンダ様は仮面をつけたままお茶を飲む。口の辺りが動くようになっていて、邪魔にならないようにできるらしい。魔法というより、多分、からくりの類だ。


「あの子やこの新しい頭は粘土が古びている感じがしますけれど、もらい物?」


 メリンダ様の視線がルイスに、手が新しい子になる予定の頭に伸びたので、簡単に説明した。ルイスは中古を修復した子で、この頭は不法投棄されていたのを引き取った、とだけ。


「あなた、本当にお人好しですのねえ」


「だって新しい子を完全に一から組もうとしても、中々決めきれませんし……」


「まあ、私達としても嬉しい話です。二人目の持ち主であっても、上手にやっていければいいですから」


 ルイスはその言葉に、にっこりと笑った。

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