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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
28章 クロスステッチの魔女と体探しの旅

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第649話 クロスステッチの魔女、服を作り上げる

 服を作り終えたのは、お師匠様とそんな話をしてから二日後のことだった。部品のひとつひとつを組み合わせるのはまだ問題がなかったものの、それらを組み立てるところがどうにも私には苦手だったのだ。


「マスター、大丈夫ですか?」


「ちょっと痛い……」


 まち針も途中で足りなくなって、普通の縫い針を何本か代用に使った結果。手を怪我するというちょっとした騒動もあった。仕方のない話だと思う。元々、私はクロスステッチの魔女。刺繍をするための道具はしっかりと手入れしたものを用意しているけれど、それらのすべてを縫い物に使えるわけではない。

 もっと具体的に言うと、私が上等な魔銀でもらって揃えているクロスステッチ用の針というのは、クロスステッチにしか使えないのだ。クロスステッチ用の布は、織り目を開けるように荒く織られている。だから、そこで使うことを前提としてある針というのは先端が鋭くないのだ。布地に空いている穴を使うのであって、自分で開ける必要がないから当然のことだ。

 なので縫い物用の針を数本まち針の代わりにした結果、指に刺さって痛い想いをしている。完全に事故だ。これからも色々と作りたいと思っているから、その第一歩として今度、まち針を買い足しておこう。先端に丸い硝子を被せてあるものを、魔女組合で見た記憶がある。


「主様ー、これの次はアワユキの! アワユキの何か作って!」


「順番だからね」


 ボタンつけにはやや苦労して、結局一日くらいかかった。なんとかつけられたそれを、感慨深い中で眺める。軽く引いてみても、ぐらつかない。よし、と安堵して、私はルイスにシャツを渡した。本当に普通の、凝ったところのひとつもない、初心者が作ったことがよくわかる小さなシャツ。それを彼は嬉しそうに抱きしめて、早速いそいそと着替えてくれた。


「そんなに喜んでくれて、嬉しいわ」


「僕達が、貴女の作ったものを喜ばないわけがありませんから」


「よかったですね」


 このシャツには何の魔法も仕込んでいないから、次からそういうのを用意しておくべきだろう。ひとまずは、アワユキとキャロル、そして新しい子のために針を動かすのが先で、それより先にはまち針や布の用意が先だった。魔法の絡んでいない品物は、そんなに買ってない。ルイスのシャツにつけたボタンのような、かわいさに惹かれて使うあてもなく買い込んだものがまだ多少あるとはいえ。


「マスター、早速着てみました! 似合いますか?」


「うん、素敵よルイス」


 でも今は、この達成感と嬉しそうなルイスの顔を堪能することにした。

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