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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
28章 クロスステッチの魔女と体探しの旅
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第647話 クロスステッチの魔女、挑戦してみる

 型紙を裏面を上にした布に当て、魔力を通すと色が消える練色石で線をなぞる。それから、二回り小さい部分に開けられていた溝をなぞるようにして、もう一周。最初の方が布を切るための線で、小さい方は布を縫うための線だと書いてあった。すべての型紙通りに布を切り出すと、思っていたよりも余裕がなくなる。

 もう少しくらい余ると思っていたのだけれど、まあ、足りなくなるよりはマシかもしれない。もう少し余ったら、これでアワユキにリボンを作ってあげたかったんだけど……ちょっとした花飾りくらいは作れるかもしれないから、切った余りの布をすぐには捨てないでおくことにする。作り始めたのは、新しい子のためのシャツだ。


「おおー」


「白い布に黒いのがくっきり」


「後でまとめて消すから大丈夫よ」


 魔銀の細針に白い糸を通して、簡単そうな袖から縫っていくことにした。表面同士を重ね合わせ、裏面に書いた線を見ながらちくちくと無心で針を動かす。本当なら凝った袖口にでもしたいところだけれど、そのやり方は難しそうだったので、今回は単純なものからやってみることにした。いつか、また作る時に、凝った袖口を試してみようと思う。今は袖も普通に縫って、肩にかかる部分で止まる。少しだけひっくり返してみると、今ルイスが着ているようなシャツの袖が確かに見えていた。


「あっ、兄様のお袖なのー!」


「できましたね、マスター!」


「よく縫えていらっしゃいますの」


「まだ片袖だからね、これからもう片方とかも作るんだから」


 そんな風には話すものの、片袖がそれらしくなってくると、私としても自信がついてくる。とう片方の袖も同じように合わせて縫っていたところに、ルイスが紅茶を淹れてくれた。


「ありがとう、ちょうど欲しかったの」


「これくらい当然です。一息つかれてはどうですか?」


「お茶菓子も持ってきたのー!」


「棚にあったビスケットですけれど」


 アワユキとキャロルにもそう言われて、私は軽い休憩を取る。そういえば、お昼ご飯は食べていなかった。ついでに魔法で出したパンをひとつ、かじった。


「お師匠様が《核》を集めてるって魔女の元へ連絡をつけて、譲ってもらうなりなんなりの決着が着く前には完成できるといいなあ、と思うのだけれど」


 随分前に気に入ったからと、使うアテもないのに買っていた小さなボタンだってある。特に買い足す予定もなく、私の技量さえ足りればシャツができる……はずだった。私が私に設けた期限より先に、できるかはいったん置いておくことにして。

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