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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
28章 クロスステッチの魔女と体探しの旅

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第637話 クロスステッチの魔女、核に迷う

 《ドール》の手足や頭、胴体などを焼く。髪をカツラにして作る。瞳を作る。頭に化粧を施す。それらは手で可能であり、やろうと思えば魔女の誰でもすぐにできることだ。けれど、《核》は違う。人間の心のカケラが必要で、魔女が自分だけでは作れないモノ。人間は魔女に、自分だけでは背負いきれない感情を託す。それが育て上げられて、《ドール》を動かす《核》になるのだ。


「《夜市》だと、人形師が出している店の一角に並べられてましたけど……《核》だけあるお店は、珍しいですね」


「私、本業は人形師なんですけれど、こういう場所には《核》を売りに来るんです」


「こんなに沢山の《核》……それだけ、心の重荷を手放したい人がいるんですね」


 私はまだ、人間の心のカケラを実際に採ったことはない。なので、店を開いている魔女に教えてもらった。

 採取用の箱を人間に触れてもらい、魔女に託したい感情を口に出す。そうすることによって、箱の中に《核》の素になる、綺麗な石が生まれるのだそうだ。人間はその感情を忘れるのではなく、前より強い衝動でそれを考えなくなる……らしい。魔女からも《核》は作れるらしいけれど、人間の頃も魔女になってからも、私から《核》を使ったことはないから、よくわからないけれど。


「これらの《核》を、人間が買い戻すことってあるんですか?」


「百年に一度、あるかないかかな……《ドール》に入れるために加工をしてしまうと、人間には戻せなくなるの。だから、いらないって手放してしまいたい感情や、これを別で取り出したいって感情をもらっているわ。たまに自分で買い戻して、昔の自分の心を眺めている人もいる、という話も聞くけれど」


 例えば、若き日の身を焼き焦がすほどの恋。

 例えば、周りが見えなくなるほどの憎悪。

 例えば、時が止まればいいと願った喜び。

 そういう心のカケラを、自分には戻せないからこそ大切に残しておいて、宝箱にでもしまっておく。そんな人間はたまにいるそうだけれど、大体の売りに来た人間は、自分の心の一部が《ドール》の《核》として売り物になることも、望んでいるらしい。


「新しい子に《核》を買おうかと思うんですが、どうしましょう……」


「たっぷり迷うといいわ。憎悪から生まれた《核》が憎しみだけでできていないように、《核》の色だけが判断基準にならないからね」


 そんなことを言われると、さらに迷ってしまう。さらに心のカケラが大きい満月級と、少ない三日月級があるのだ。小さな売り場とはいえ、選択肢が多かった。

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