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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
28章 クロスステッチの魔女と体探しの旅
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第636話 クロスステッチの魔女、店巡りを楽しむ

 《小市》は《夜市》と違って規模が小さいからか、店主と客で雑談をする光景があちこちで目に入った。


「こちらの肌の質感! 何を使ったらこんな肌が作れますの?」


「これは白磁幽石を砕いたものを混ぜ込んでいるので、この通り傾けるとキラキラ光るんです」


「どうです? この目、似合いますか?」


「ううん、こっちのもう少し淡い物と比べたいから片方取り替えてみて」


「わかりました」


 夜市は店も客も多い分、じっくりとそれぞれの前に足を止めて眺めるほどの時間はどうしても足りなかった。だけど、ここではそれだけの時間がある。そう思ったら、とりあえず目についたところからひとつずつ、じっくり見てみたくなった。


「ここは……わかった、髪のお店ね?」


「ええ。私の趣味で作った《ドール》の髪の毛を、カツラのようにして売っているの。人間や魔女に使えない染料でも使えるから、なんでもあるわよ」


 一軒目にいたのは、髪の毛ばかりを売る魔女だった。素材は魔綿や魔絹、その他様々。珍しいところでは、薄緑色をしてほんのり光るものもあった。これは質のいい灯草の芯の部分を繊維に抜き出したもので、作るのにものすごく手間がかかっているという。その分どうしても高価で、確かに値段として書いてある銀貨の数が一段多かった。ここまでの高級品は、さすがに買えるものではない。いいものを見させてもらったと、楽しむだけにした。


「そちらの《ドール》達に試着もできるわよ」


「今日はこの子達の髪を買いに来たのではなくて、新しい子のためにお買い物に来たの。他も見てから、また見に来るわ」


 私が素直にそう断ると、彼女は特に気を悪くしたりした様子もなく「ではまたね」と軽く手を振って送ってくれた。

 隣の店は、キラキラと光っているのがさっきから目に入っていた。瞳を売っているのかと思ったけれど、違う。並べられているのはすべて、《核》だった。どれも専用の薬液に入れられていて、大きいものから小さいものまで、多種多様に揃えられている。


「《核》がこんなに沢山……!」


「《付与珠(オプション・ジェム)》も各種、取り扱いありますよー。家事に武術の基本から、紅茶やお菓子作り、掃除などの細かい専門技能までー」


 その言葉に目を輝かせたのはルイスだ。私が何も入れてないから、どんなものか気になったらしい。ルイスが魔女に色々と聞いている様子を横目に、私は新しい子に使える《核》がないかを見ていた。それぞれの《核》には、どんな人間から採ったどんな感情かが記載されているので、それも参考にした。

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