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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
28章 クロスステッチの魔女と体探しの旅

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第634話 クロスステッチの魔女、パインロルトの街に着く

 パインロルトの街は、大きな街道の近くにあるそれなりに大きな街だった。私達が目当てとする催しは《小市》と呼ばれ、魔女組合の建物でやるらしい。だから街の魔女組合に顔を出し、参加したい旨を伝えれば買い物ができるのだと教わっていた。


「今度やる、《ドール》を売る《小市》に参加したいのだけれど」


「もう売り手の枠はいっぱいなので、買い手でしたら参加できますよ」


 パインロルトの街に着いて、魔女組合でそんな会話をしたのは、箒を飛ばして三日目のこと。《小市》の開催は、明日だった。無事に参加ができそうでほっとしてから、今日明日の宿を考えつつ財布の中身を確認する。大きめの貨幣に換算して考えると、すべてが揃った《ドール》を一揃い買うには心許ないが、それに近いだけの金額はなんとか出せそうだった。


「それから何か、お仕事を受けていくわ」


「《小市》の資金集めかな? 三等級魔女なら、このあたりを引き受けてくれると助かるんだけどね」


「大当たりです――これとこれ、受けます。こっちはもう持ってるので……はい、使えそうですか?」


 採取依頼のひとつである蒼のパーニニアの花は、《魔女の箱庭》で株を増やしている植物のひとつだった。だから箱庭を開き、ちょうど花を咲かせていたものを一本、根本から掘って受付の魔女に渡す。


「ええ、確かに。それなら、この依頼はもう達成ね。謝礼はこの通りよ」


「ありがとうございます」


 花一本にしては金額が多く感じるけれど、確かこの花は、パインロルトの近くでは咲かない種類だったはずだ。だから、高めの値段となっているのだろう。他も、受けた依頼は元々カバンや箱庭に持っている物が多かった。なのでそれらを引き取ってもらい、細かめのお金を増やす。

 普通に組合に買い取ってもらってもいいのだけれど、依頼の達成として渡せば少し高めに買ってくれるのだ。向こうも、私が雑多に売った中から依頼を満たすものを選り分ける必要がなくなって、少し楽ができる。『お互いに損のない取引だから、魔女組合でお金稼ぎをする時は覚えておくんだよ』とお師匠様に言われたものだっけ。


「それから、今夜泊まるところを決めないと……まあ、適当に歩いてたら見つかるか」


 そんなことを呟きながら、私は組合を一度出て宿屋を探すことにした。幸いにも程よい値段で食事付きの宿屋が見つかったので、とりあえず二泊で手続きをした。


「うちのお夕飯、期待して損はさせませんからね!」


 看板娘が笑う。いい滞在になりそうだった。

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