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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
28章 クロスステッチの魔女と体探しの旅

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第630話 クロスステッチの魔女、一息つく

 少し早い夕食を終えて宿屋に戻り、旅の疲れと汚れを簡単に落とす。といっても浴槽のある宿屋ではなかったので、タライに入ったお湯をもらってきたのだ。これで足や手を洗い、ついでに服も洗って部屋の洗濯紐に引っ掛けておく。安かったのだけれど、手入れの行き届いたいい宿だった。寝間着に着替え、ルイス達が眠るためのベッドをチェストに置いて、ついでに明日使うものを机の上に出しておくことにした。魔綿の糸に、卓上機織り機、それから翠緑石の粉末の瓶。作業に取り掛かってしまうとキリが悪いから、荒織のためにピンの調整だけしたところで置いておくことにした。さすがに箒に乗った後だから、休みたい。


「マスター、今日はもう休まれますか?」


「さすがに箒が長かったからね、今日は。ちゃんと眠って休むことにするわ」


 私はそう言って、ベッドに勢いよく転がった。そのまま丸くなって目を閉じると、体は思っていたよりも疲れていたらしい。あっという間に眠りについた。


「ふあ~……」


「おはようございます、マスター。朝の紅茶をお淹れしますね」


「渋めにお願い……」


 翌朝、射し込んできた日の光で目を醒ました。朝食を買いに行こうかとも思ったけれど、少々面倒なので魔法でパンを出して簡単に食べる。バターでも用意したかったが、こないだ切らしてしまって買うのを忘れていた。ルイスに紅茶も淹れてもらって、一緒に飲んだ。


「よしっ、機織りに取り掛かるわよー!」


 そう宣言して気合を入れて、縦糸をピンに通して設置。隙間なく植わっていたはずのピンの一部を取り除いているのは、荒織をするためだった。覚えていればつけていてもいいけれど、自信がないし、取ってしまった方が確実だったりする。


糸をかせにたっぷりと巻いて、織り始めた。人間だった頃は機織り機と言えば足で踏む物しかなかったから、機織りは子供にはできない大人の女の仕事だった。単調で退屈ではあったけれど、機織りの仕事をすることになったというのはある程度育って大人に近づいた証だったのだ。今も家にあるのは踏む方の機織り機だけど、あれを持ち歩くのは大きすぎるし煩いので、お師匠様からもらった卓上機織り機が活躍している。山羊の毛は魔綿糸とは勝手が違ったけれど、さすがにもう魔綿糸を織る方が長くなってきたのだ。ある程度織ったら少し開けて織る、というのを繰り返して、指定された大きさの魔綿糸の荒織が出来上がった頃には、気づけば日が暮れていた。

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