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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
28章 クロスステッチの魔女と体探しの旅
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第628話 クロスステッチの魔女、依頼を受けたりする

 知らない街に到着した私は、そのまま寝台と小部屋だけを貸してくれる形式の宿屋に泊まることにした。


「魔女様、すぐにお休みになりますか?」


「この街の魔女組合に行きたいから、その後で休むことにするわ。だから、用意だけしておいて頂戴」


「かしこまりました」


 宿屋の娘とそんな会話をしながら、私はその近くにあると道を教えてもらった魔女組合に行くことにした。


「すみませーん、お仕事探しに来ました」


「あら、旅の魔女が来たとは噂がもう来ていたけど……わざわざ働きに来るだなんて、勤勉なのね」


「お金ないんです」


 私がきっぱり言い切ると、受付にいた魔女は大笑いをした。私の銅色の首飾りを見て、「三等級の魔女に頼みたい依頼はこの辺だよ」と教えてくれる。糸紡ぎや機織りのような単純な依頼が多かった四等級の頃と違って、紡ぐ糸や織る布にももう少し指定がかけられている。


「魔綿の糸の荒織り……これは絶対、私みたいなクロスステッチの魔女からの依頼ね。翠緑石を砕いた染料で染めてくだされば増額します、か。確かあったわね」


 他にも魔力のある植物を何種類か混ぜた糸を紡ぐとか、特定の素材を採ってきてほしいとかの依頼を適当に選んで、もう持っているものはそのまま渡すことにする。これだけで、普通に売ったりするより多分高いお金が手に入った。


「あんた、今夜の宿代も足りなかったのかい?」


「宿代は平気だけど、欲しいもののためにはお金がいくらあっても足りなくて」


「まあ、よくある話よねえ」


 依頼の一部はこれから作らないといけないのだけれど、魔女の依頼の大半は時間制限なんてそんなにない。だから、機織りや糸紡ぎの作業は宿屋でやることにする。


「マスター、うまくお金が集まるといいですね」


「依頼を出す魔女はそこそこいるのよね……私も出そうかと考えたことはあるんだけど、そういえばやったことないや」


「やったことないのー?」


「自分で作った方が早かったから……」


 これは本当にそうだった。何せいつ届くかもわからないのだ。そう思えば、こういうところに出される依頼というのは、冒険者組合の方と違って締め切りがない。


(例外はガブリエラ様のグースの羽くらいかしら。あれはある意味、いつでも大量に募集しているんだろうけれど)


 いつもいつでも大量に必要なのだろう、あの様子だと。冬でなくても。そう思うと、ガブリエラ様が少し気の毒になった。


「あ、それとこの辺りでオススメのご飯屋さんありますか? 宿屋には寝るだけになりそうなんです」


「それなら、この辺りは近くの湖から採れる魚が有名だねえ。二つ隣の酒場がいいよ」


 私はその通りにすることにした。

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