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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
28章 クロスステッチの魔女と体探しの旅

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第627話 クロスステッチの魔女、移動する

「……では、そろそろお暇します。私はここにまだ知り合いがいないので、眠りを乱す前に失礼しないと」


「おや、そうですか」


 午後のお茶には少し早い頃合いに、私は《天秤の魔女》の建物を辞することにした。私の知り合いで、この街に入ることを決めた魔女はいない。ここに眠っているのは……心の渇きを癒すべく、魔女のまま意識を落とすことを望んだ女達だ。エヴァのように魔女を辞めて老い朽ちるのではなく、若く美しく魔女であるまま――いつか再び、自分の心を震わせるものに出会えることを夢見て、眠っている魔女達の街。


「また会う機会……は、あんまりない方がいいのだけれど。まあ、この頭でどんな《ドール》を組み上げたかは、水晶ででも教えて欲しいわね。義務じゃなくて、単純に気になるから」


「わかりました。その時には、この子にもご挨拶させますね」


 箱ごと持ち帰っていいと言われたので、頭がしまわれていた箱ももらった。丁寧に加工された滑らかな表面に触り、どんな子にしようかと考える。髪の色は、ルイスが銀だキャロルは金だから、他の色がいい。目は決まってるから、後は体と、着せる服と、履かせる靴だ。


「あたし達のお仕事対象にならないよう、大人しくしててよね。せっかく引き取ってくれたんだもの……その子はここの子じゃなくなるの、少し寂しいけど」


「大丈夫ですよ、リリィ。マスターはそんなことしませんから」


 誰にも引き取られなかった《ドール》は、《天秤の魔女》や魔女組合、《裁きの魔女》の元で、特定の主を持たずに働くらしい。私が引き取らなければ、この子も彼女達の後輩になっていたということだ。

 私は彼女達に一礼して、ゆっくりと歩いてファルミクリアの街を出た。相変わらず街は静かで、午後なのに夜が明けてすぐのように人気がなかった。失礼のないように、門番の《ドール》達に軽く挨拶をして、街の門を出たところで箒に乗って、次はどこに行こうかと考える。


「とりあえず、数日の宿代とご飯代くらいはある。とはいえ、他の部品を買うにはお金を稼がなくっちゃ……一番近くの魔女組合、っと」


 組合のところまで行けば、そこには最低でも村か街があるはずだ。そんな想いで《探し》の魔法を作り出し、その方向に向かって飛んで行くことにした。行きに来たのとは別の方角だから、何があるかはまったくわからない。鳥になったことで距離がそこまで遠くなさそうなことだけが、今の救いだった。日が暮れるまでには、どこかしらには着くだろう。

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