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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
27章 クロスステッチの魔女と引きこもってみる日々
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第618話 クロスステッチの魔女、贈り物をしあう

 食事を終えてひと段落したところで、私はこっそりと持ってきていた贈り物を机の上に出した。小さく包装した布包みが三つ、色違いのリボンをかけたものだ。


「はい、これ。赤いのはルイスに、白いのはアワユキに、黄色のはキャロルによ」


「「「わあ~……!」」」


 三人がそれぞれに包みを開くと、中に入っていたのは私があの時に買った石を糸で編んで飾りにしたものだった。それぞれに合うように、長さを工夫してある。糸も、ただの糸ではない。細くて軽くて丈夫な、白露蜘蛛の糸を使っている。蜘蛛はこの森の近くにいる種類で、今回の使い勝手が良かったから春になったら、私の《箱

庭》で飼おうと考えていた。

 白露蜘蛛の糸を魔女の手で紡ぎ直した糸を網状に編んで、その中にこの間買った水色の石を入れる。それから袋の口を閉じて、首や手につけられるように、輪の長さを変えられるようにした糸をつけておいたのだ。


「わあ、綺麗です……」


「ありがとー、主様!」


「大事にしますわ」


 三人が喜んでくれたのが嬉しくて、私もついにこにことしてしまう。メルチにはバタバタしていて何もあげられなかったけれど、彼女には知識とメルチの首飾りをあげたことで勘弁してほしいな、なんてかすかに思ってしまった。


「マスター、僕達からも贈り物があるんです」


「受け取って、受け取って」


「三人で考えたんです」


 そう言って三人が出してくれたのは、私の手のひらに乗る程度の小さな像だった。木を彫ったり枝を組み合わせたような白っぽい像で、ウサギの形をしていた。目のところがキラキラとしているのは、多分、何かの石を嵌め込んであるのだろうと思う。私がその像を持ちあげて、色々な角度から眺めていると、枝だけでなく葉っぱも使って耳や尻尾を作ったり、工夫がされているようだった。


「すごいわね、これ……!」


「三人で決めた後、僕が木を彫って」


「アワユキが目のところの石を用意したのー!」


「枝を編んだりしたのはわたくしです」


 きゃっきゃっと楽しそうに制作秘話を教えてくれる三人の姿を見ていると、ますます笑みが深くなってしまう。小さく畳んだ布を敷いて、前に作って置いた《状態保存》の魔法の布を上に敷く。私はその上に、もらった像を置いた。


「すっごく大事にするわ。本当は透明な覆いでもしたいところなんだけれど、ちょうどいいのはないからね……」


 透明な硝子自体を持っていないわけではないけれど、この像をちょうど入れられるような大きさのものは残念ながら持っていなかった。

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