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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
27章 クロスステッチの魔女と引きこもってみる日々

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第616話 クロスステッチの魔女、古道具をもらう

「一通りの裁縫道具はもうとっくに持たせてるからね。今あるの以上が欲しければ、自分でお買いなさい。あげられる道具はこっち――人形修理の道具よ」


 お師匠様はそう言って、よく手入れされた革袋とその中身を応接間の机に広げた。第二倉庫部屋から戻って、明るい中で教えてくれることになったのだ。


「こっちが刷毛、こっちは筆。大きさに合わせて、《ドール》の肌の傷を塗り隠すためのものだ。それからこの辺は逆に、悪いところを切り出したりするためのもの」


 見習いの人形修復師が、最初に使うような物らしい。私は普通の魔法でいっぱいいっぱいだったから、二十年の見習い期間の間、触れたことはなかった。


「これは……水晶の壺?」


「《ドール》の《核》を癒すための薬液用の壺よ、《核》を入れるだけだから小さいの。その代わり大した量の薬液は入れられないから、頻繁に交換しないといけないけど」


 ルイスからキャロルを分離させていた時のことを、私は思い出していた。ああいうのは稀とはいえ、体に酷い損傷があった時は、《核》も弱まる。そして《核》は傷を癒すために魔力を欲するので、取り込みやすいように魔力を整え、傷を癒すようにしたのが薬液なのだという。そう言えば確かに、ルイスもキャロルもアワユキも、時々入れてやると生活でついた細かな傷が癒えていた。


「そろそろ本格的に、興味があるなら修復のことを教えてやろうと思ってね」


「ありがとうございます!」


 道具を与えられたとはいえ、家で何かあったら私がすぐにルイス達を治していいわけではない、とは念押しをされた。お師匠様の家に通って修復のことを学び、お許しが出たら、ということらしい。まあ、当然の措置だった。


「ありがとうございます、お師匠様! 来年から頑張ります!」


「もちろん、魔法の練習もちゃんとやるのよ」


「はい!」


 私がそう頷くと、お師匠様は少しだけ、眩しいものを見るような目をした。あの子のことでも、考えていたのかもしれない。


「それと、壊さないこと。これは私だけでなく、お前の姉弟子達の手を渡り歩いてはここに戻ってきたの。修理を本格的にやりたい子は、これで慣れてから自分のを買う。ほどほどにやりたい子も、必要なものを理解して買う。いいやと思ったら返す。そういうものよ」


「大事に扱います……!」


 本当に初心者向け、入門品ということらしい。私は一度広げた道具を自分の手で袋に戻し、大事に胸に抱えた。次の持ち主は、私なのだ。

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