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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
27章 クロスステッチの魔女と引きこもってみる日々
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第610話 クロスステッチの魔女、抽選に挑戦してみる

 周囲の魔女の話を総合してみると、どうやら、このお店では高価な《ドール》の部品を売っているかなり高級路線のお店のようだった。しかも、ただお金を積んで手に入るようなものではない。今私の目の前にある美しい瞳は、抽選で当たった人にだけ売られるものなのだそうだ。


「抽選で当たった魔女には手紙が行くから、その時にお金を支払うのよ」


「へえ~、そういう方式のお店もあるのね」


「いつも、素敵なものを出してくれているの。今年のアイも素敵だわ~」


 確かに、とても綺麗な瞳だった。黄色と水色が合わさった色をしていて、よく見ると白い何かが瞳に入っている、と思ったのは、恐らくは花の模様だった。実際にあり得る瞳では全くない。けれど、考えてみれば《ドール》の髪も瞳も、魔女が作るものなのだ。それを思うと、なるほど、こういうものはもっとあってもおかしくないのだろう。思えば前に来た夜市でも、《ドール》の手足や胴体に何かの魔物や獣の一部を組み込んで美しく仕上げたお店があった。


「お値段はー……家に置いていったお金で、払えそうね」


「大丈夫なんですか?」


「春になり次第、いっぱい働けば……」


 家に残してあるお金全てを、丸っと支払うほどではない。春まで保存食や薪もあるし、今回も冬の間は籠っているつもりだったから、最大の「使うアテ」はこの夜市なのだ。売ってくれるのは、少し大きさの違う瞳が二種類。書いてある説明によると、どちらも十対しか作っていないらしい。そしてこうしている間にも、魔女達が紙にあれこれと書いて応募箱に入れて行っている。


「……私も書くわ」


 ルイスに使ってもいい。キャロルには、さすがに大きすぎる。もしかしたら、単純に眺めているだけでも楽しそうだ。紙を一枚と羽ペンをもらってみると、名前、住所、小さい方と大きい方、どちらがいいか、を書く欄がある。必要な内容をそのまま記入して、私も自分の書いた紙を応募箱に入れる。


「当たるといいですね、マスター。当たったら、僕の瞳に使ってもいいですし、新しい者を迎えられてもよいかと」


「そういうのは、当たってから考えるのよ。まあ、普通に見ているだけでも楽しそうだし、何より綺麗だもの」


 もし当たったら、新しい子を迎えてもいいな、なんて考える。とはいえ、今買ってしまって、当たらなかったら悲しい。何よりお金も足りない。今日は応募だけして、帰り道に向けて《ドール》の部品を眺めながら、ひとまず帰っていくことにした。

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