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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
27章 クロスステッチの魔女と引きこもってみる日々
607/1030

第607話 クロスステッチの魔女、この後を真面目に考える

「残りの予算をどう使うか、それが問題よね」


 適当に歩き回るやり方を続けていては、一度行った店に戻るのは難しい。こんな人混みでは箒で飛べないし、そもそも服に飛ぶ魔法をかけていたとしても、魔女がここで空を飛ぶこと自体が禁止されているのだ。ただでさえ混んでいるのに、空も飛び始めたらキリがない、という理由で。《魔女の夜市》のために、外国から来る魔女もいるのだ。ここはターリア様の新年会よりも魔女の多く集まっている、と言われるだけあって、私も人波に流されて見られなかったお店がいくつかあった。場所を覚えるのも難しいし、覚えた場所に戻って来られるかも問題だ。

 小さな手鏡はキャロルに、鉢植えは《ドール》達に、靴は私に。ならば後はやっぱり、ルイスとアワユキにも何かを買ってあげたい。そう思った私は、なんとか《ドール》向けの小さな品が売っている屋台の集まっていた一角へ向かうことにした。


「あれっ、マスターご自身には靴だけですか?」


「他も買えばいいのに」


「お洋服とか!」


「予算が足りないわよ! 今はお財布の分しかお金がないんだから!」


 家にあるお金を追加で取りに行くなんてことしてたら、夜市が終わってしまう。《扉》系の魔法でもないと難しい話だったし、仮に使えたとしても、冬を越したりするお金に下手に手をつけたくなかった。吹雪いてきたら、魔女組合に糸を持ち込むのも楽じゃない。


「だから、私の買い物はこれでおしまい! ルイスとアワユキにも、何か買ってあげないとね〜」


 そのための移動は、簡単ではないのだけれど。なんとか人の流れに逆らおうとしている時、ふと、屋台のひとつに並べられているものに目が止まった。

 キラキラと灯りを受けて輝く、石を並べた店だ。魔力はあるが、宝石、と呼ぶほどではない石をまとめて扱っている屋台らしい。色も様々で、物によっては透き通って下の台座が見えるものもあった。大きさは、一番大きくても指輪につける程度。逆に、《ドール》には何にでもできそうだった。ちらりと値札を見てみると、その分安い。


「綺麗な石ねえ。ルイス、アワユキ、どう? キャロルも見てご覧」


 私の言葉に、カバンから顔を出した二人が屋台の上の石を見始める。店員の魔女はその様子を見ながら、「石を削ったり切り分けた時にできた、小さいものを綺麗に整えて並べているのよ」と教えてくれた。


「例えばこの青い石は、このブローチにつけている石を切り出した時の欠片を磨いたものなの」


 そしてついでに、高価なブローチも売られそうになった。

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