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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
27章 クロスステッチの魔女と引きこもってみる日々

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第604話 クロスステッチの魔女、迷う

 服屋は楽しいものだった。ワンピースやドレスを見る以外にも、楽しみは色々とある。


「魔女の証明は首飾りで十分証明されますが、魔女らしさとオシャレを求めてかわいい三角帽子を買う魔女も最近は増えました。というわけで、こういうのもあります」


 そう言って手で示された方を見ると、フリルやレースのついたもの、ブローチに羽飾り、花の飾り……生真面目な魔女が見れば鼻白みそうなほど、様々に装飾された三角帽子が並んでいた。色も、白黒でまとめたものから白い布に様々な色を揃えたものまで、種類が多い。魔力を感じる素材が多いから、そういうところでも選びがいがあるのだろう。


「それから、靴も置いてますよ。靴も帽子も、それぞれ専門の魔女に作ってもらったものなので、品質は保証します」


 靴の方は踵の高さ、色、形がいくつも揃えられていた。こちらは帽子よりも魔力が強い、というかひとつの魔法になっている気がする。私の怪訝そうな顔に気づいたのだろう。やや自慢げに、店員の魔女が話し出した。


「こちらは、かの靴作りの二等級魔法使い、ユーノ様に作っていただいた靴です。その分お値段は張りますが、一緒につけます証明書を持っていただければユーノ様に靴の手入れや調整を行っていただけるように手配しております」


 靴作りの二等級魔法使いのユーノ、といえば、いつかに一度会ったことのある異国の魔法使いの名前だ。靴でも服でも帽子でもそうだが、大体のものは依頼して作ってもらうものだから、縁はなければ本当にないものだ。頼んだ品が百年後にひょっこり届いたことがあった、とは、確か、グレイシアお姉様の話だったか。


「どれどれ、お値段は……」


 一番目を惹いた、可憐な低めのヒールに小さな白いリボンのついた黒い靴についていた小さな紙から、値段を確認する。


「……」


 さすが、ちゃんとした職人の靴だった。そっと戻す。何も考えずに買うと言っていたら、今日の予算の半分はこれで消し飛んでしまうところだった。


「マスター、買ってはどうです?」


「さらっと言ってくれたわね???」


「アワユキ達にも色々買ったんだから、主様にも買って欲しいの!」


「お値段帯が全然違うわよ!」


 もちろん、小さいから小物が安いわけではない。小さくする、というのは技術なのだ。だから、本当に普通に売っているものとは訳が違う。が、これはさらに別の問題だった。


「よろしければ他を見に行った後、戻ってきて……というのは、いかがです?」


「それをしてしまうと、ここに戻って来られなさそうで……」


 私はため息をついた。

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