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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
27章 クロスステッチの魔女と引きこもってみる日々
600/1023

第600話 クロスステッチの魔女、今年の《魔女の夜市》に行く

 お師匠様に贈る魔法を使っている間に、冬至の日が来た。《魔女の夜市》に行く夜が来たのだ。黒いワンピースに黒い靴を履いて、出かける用意をする。この冬の間、遠出をする予定はここだけだ。カバンの中は整理したから、見られてまずそうなもの――幻霧キノコの糸や、《精霊樹》の枝を植えた箱庭とか、そういうものはすべて家に置いていくことにする。カバンをひっくり返されても常識的なものしか出てこない、身軽な状態にして私は箒に乗った。


「それじゃあ、《魔女の夜市》へしゅっぱーつ!」


「楽しみですね」


「どんなのがあるかなー?」


「初めてだから、楽しみです」


 一番短い日が落ちた後、私は《夜目》の魔法を刺繍した布で目を覆った状態で、開催場所まで飛んで行った。開催場所は前回とは違うどこかの草原で、その代わり、前の場所よりも明らかに広く、沢山の魔女が店を並べているのがわかる。


「うわっ眩し!」


「マスター、その魔法! 《夜目》の魔法を外してください!」


 少しくらい大丈夫かな、と思っていたのだけれど、《夜目》の魔法で何倍にも増幅された蝋燭や魔法の明かりがあまりにも眩しい。近づくにつれて、その眩しさは瞼を閉じてもなお眩しく感じるまでになっていた。箒をなんとか、入り口手前の箒の発着場の近くまでやり、ゆっくり下ろしていく。その間に、私はルイスに《夜目》の魔法の刺繍を外してもらった。


「暗くて見えないよりはって、思ったんだけど……少し前に、外しておくべきだったわね……」


「お疲れ様です、マスター」


「まだ会場に入ってもいないのに!」


 そんなことをぶちぶちと言いながら、暗い森を見て目を落ち着かせる。しばらくして目は大丈夫だろうと確信した状態で振り返ると、そこには煌々とした明かりに照らされた、まるで昼のような《魔女の夜市》の光景が広がっていた。


「今日はお目当てとか、あるのー?」


「まったくないわ! お財布の中身が空っぽになる前に帰ること、くらいかしら。今日の目標は」


 軽く周囲を見てみるが、知った影はひとつもなかった。一緒に回る人もいないなら、完全に気分で行くことになる。案内板も見ないで、気の向かう方へとうろうろしてみることにした。


「新作の《ドール》が欲しいなら、是非とも当工房へ!」


「《ドール》の服、魔女の服、どっちも各種取り揃えておりまーす」


「こちらは家具屋でーす、新しいベッドをお披露目してまーす」


 相変わらず、目移りしては止まらなくなるような場所だった。なんでもかんでもキラキラして見えて、私は楽しくなってくる。

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