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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
27章 クロスステッチの魔女と引きこもってみる日々
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第597話 クロスステッチの魔女、冬を迎える

 冬を迎えたのは、私達が備えを万全にできた後だった。空気が冷えていき、雪がちらつく。アワユキも元気になってきたので、ああ冬が来るんだな、とわかった。


「今年の冬は何事もなく、ゆっくりと過ごしたいわね」


 何せ独り立ちしてから毎年、何かが起きている気がするのだ。お師匠様の家にいた頃には、大人しく修行をしながら春を待てていたというのに。


「冬になると、今年は何が起きるからなーってアワユキ、楽しみにしてるよ?」


「あのね、普通はそんなに色々と起きないのよ」


 私はアワユキにそう言いながら、小雪が降る窓の外を眺めていた。アワユキは外に出て遊びたいようだけれど、この子だけ外に出してというのも少し危ない。何せつい最近、幻霧キノコなんて危ない物を拾って帰ってきた前科があるのだ。今度は何を拾ってくるか、つついてくるか、と思うと、いくら雪の中でも単体では出せなかった。


「雪が積もったら、みんなで遊んだりしましょうね」


「「「はあい」」」


 私の言葉に、三人は大人しく頷いた。


 それからは魔法の勉強や実践をしながら、冬の日々を過ごしていた。例えば、三等級にしか使えない魔法作り。例えば、それに必要な糸の染色や機織り。降ったばかりの新雪で白く染めた糸を濯ぐと、さらに白く美しい糸が仕上がるというのを試してみたのは楽しかった。かじかんだ手は直後に暖炉に晒さないといけなかったけれど、わざわざ本で言われていただけあって、魔力の濃い、上質な糸になる。


「この糸も大事に取っておいて、いざという魔法に……いえ、冬はまだ長いから、沢山作りましょうか」


「あるじさま、指が真っ赤ですわよ?」


「それだけの価値があるってことだからね」


 白く染めておいたこの糸で《パン作り》の魔法を作って、魔力を通してみる。すると目論み通り、白くて柔らかいパンを作ることができた。他にももちろん、いい使い方があるだろう。そのためにも、白いパンで英気を養った次の日から、私は家の前の雪で糸を染めたり濯いだりすることに熱中した。


「マスター、毎日やってたら手がおかしくなってしまいますよ。僕達がやります」


「わたくし達なら、冷たいと感じても指先を痛めはしませんわよ?」


「主様は魔女なんだよ? アワユキの仲間じゃないんだよ?」


「だって、楽しくて……」


 一週間ほど連日やってたら、三人がかりで怒られたので反省することにした。この期間で溜まった十かせもの白雪染め糸は、冬の良き思い出および虎の子として大事にすることにする。

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